8/16/2025, 2:14:44 PM
夜空を見上げると、僕の上空だけぽっかりと穴があいていた。
そう見えたのは、雲が周りを取り囲むように低い位置にあって、見上げた先に雲が一切なかったからだ。
僕の半径数キロだけが世界であって、その上に覆いかぶさった半円球のプラスチックが、星や月やその先の暗闇を映し出しているみたいだ。
僕が足を踏み出すと、天球の中の世界がぐぐぐと動く。
僕が歩みを進めるたびに、前から世界が湧いて出て、後ろへと沈むように消えていく。
それでも夜空は変わらない。
月はずっと同じ位置にあり、僕はずっと天球の中心にいる。
見上げた夜空の一番膨らんだところ、一番遠くて深い宇宙から、この世界を形作る全てのものが、僕のために降り注いでいるみたいだ。
#遠くの空へ