僕のLINEアプリには常に1がついている
それは君がくれた最後のメッセージ
某遊園地で撮った笑顔のアイコンの隣、『いってくるね✈』の文字
その横には青白く『1』という数字がポツンと光っている
開かないんじゃない、開けないんだ
触った瞬間、なにもかも終わってしまいそうで
もうこの世界にいないのだと実感したくなくて
あの日のNEWSを受け入れたくなくて
送っても、もう既読すらつかない現実を突きつけられたくなくて
本当は、今もどこか遠い国で暮らしていて、『なに暗い顔しちゃって、死んじゃったとでも思った?』って急に僕の前に現れてよ
込み上げてくる涙を堪えようと顔をあげる
夜空を見上げると飛び立っていく飛行機がみえた
「っ……、…………ぅっ……っ」
一年前の今日、ぽっかりと空いてしまった心から、泣けなかった一年分の涙が溢れてきた
『開けないLINE』2023,09,02
常に誰かと比べられては蔑まれる日々
がんばっているのに
何が足りない
どこがいけない
だれかおしえてよ
完全な君と不完全な僕
同じ生命体
何が違う
『不完全な僕』2023,09,01
「試してみますか?」
(この匂い……)
夜になってもまだ、手首に残る香水の匂いに思わず
顔を近づけ息を吸う
『香水』
ただの香りのはずなのに
身につける人が違うだけでこうも変わるのか
忘れたくても頭から消せない
匂いだけであの人を思い出してしまう
あの日が蘇ってくる
哀しいくらい覚えている
忘れることなんて出来なかった
声、素肌、伝う汗、体温
香水と混じった君の匂いを
もう戻ることない関係に思いを馳せる
『香水』2023,08,30
『アイドルなんて無理だ』
そう言われ、家を飛び出て早数年
いまや、アリーナでツアーが出来るほどに人気になっていった
そして、いわゆる地方と呼ばれる僕の地元でも初めて公演が組まれた
あの日から、家族には連絡も近況報告も一切して来なかった
まだ小さかった妹は、お兄ちゃんが突然居なくなってどう思っただろうか
そんな事を思い出したりしながら
刻一刻と開演の時間は進んでいく
公演の幕が上がる
《みんなを笑顔に》をモットーに歌って踊っていたとき、ふと目にはいった光景に
『嘘だろ』
思わず、心の中で声がでていた
そこに居たのは紛れもない家族だった
いわゆる、関係者席でも無い、一般席に
メンバーやマネージャーさんに「せっかくだし、関係者席用のチケット送ってあげたら?」と言われたりもしたが、頑なに送らなかったのだ
だから一般でチケットをとったのだろう
応募しても当たるか分からないのに
特に親なんて絶対に来るわけない、そう思っていたから
だからステージの上から見つけた時、一瞬、時が止まったかと思った
外周でのパフォーマンス時には更にハッキリと見えた
妹の手に握られていた団扇には思わず苦笑いが出た
(そこはお兄ちゃんじゃないのかよ……)
どうやら妹の"推し"とやらは自分じゃないらしい
まぁ、楽しんでくれたら、笑顔になってくれれば、それでだけでいい
SHOWはまだまだ始まったばかりだ
最後には僕の方へ振り向かせてやる
いまさら言葉なんかいらないから
ただ、僕のことをみていて
舞台(ステージ)の上で輝く、ぼくを
『言葉はいらない、ただ・・・』2023 ,08,30
『突然の君の訪問』0828