#127 夫婦円満の秘密
いちじく畑を潰してできたコインパーキングの灯りが我が家を照らしている。
夫が「防犯になっていいね」と言うので「そうね」と口を合わせたけれど、本当は、月明かりよりも白く強く、煌々と夜を照らすこの灯りの遠慮なさが嫌い。でも、そんなことを言うとめんどくさがられそうなので、この灯りのように白々しい笑顔の仮面をかぶって「そうね」と微笑んだ。
お題「窓から見える景色」
#126 秋恋
図書室で
ページ操る
君の指
金木犀の
コロンが香る
お題「秋恋」
#125 夜の灯りを喰らうひと
夜の灯りが地上に広がる
このひとつひとつの灯りに
人生があり幸せがある
今夜も地上に広がる灯りに手を伸ばすと
灯りは一粒のあめ玉となり
彼はそれを口に運んだ
誰かの幸せが胃袋に広がる
叶うなら、喰らう側ではなく
これら一つの
ただの灯りになりたかった...
そんな憂鬱を抱きながら
彼は灯りのあめ玉をもう一粒口に入れた
あぁ 胸が焼ける
でも 今夜はもう少し喰らわねば
この夜の灯りが
これ以上
暗い夜を侵さぬように__
お題「夜景」
#124 砂になるまでリフレイン
浜辺の波が奏でる唄は
流れ着いた貝殻の
秘めた記憶の
遠い遠いどこかの唄
長旅の末、欠けてしまった貝殻の
欠けた唄の不完全なメロディーを
波は構わずにリフレインします
繰り返す波に洗われて
貝殻が砂となり
唄が消えてしまうまで__
お題「貝殻」
#123 いつか星屑にしてあげましょう。
きらめく星々をシロップにして
綿菓子のような氷の山を壊さないように
そっとかけました
この夏、最後のみぞれ氷です
ところが、
無遠慮に追い掛けする
あなたのイチゴシロップが
綿菓子氷の山を赤くえぐります
それを乱暴に一気に平らげて
赤く染まった唇から
「やっぱり抹茶が好きだな」
と、屈託なく放たれた言葉が棘となり
チクリと私を刺して小さな殺意が芽生えました
いつか星屑にしてあげましょう。
お題「きらめき」