#97 未亡人の台所
あなたがいたから
美味しいスープを作ろうと
毎日張り切れたのかもしれない…
懐かしくも寂しく
そして、静かに
今はひとりの台所で自分のために
鍋をかき混ぜている
夏至の日の夕暮れはまだまだやってこないけれど
つつがなく終わろうとしている今日の日に
早めの感謝をささげながら
ひとり静かに鍋をかき混ぜている
お題「あなたがいたから」
#96 短歌
あいまいな
気持ちが滲む
今朝の空
心にさせる
雨傘を持つ
お題「あいまいな空」
#95 短歌
あじさいの
むらさき溶けた
水たまり
梅雨の晴れ間の
空色混ぜる
お題「あじさい」
#94 好き嫌いの描き方
好き嫌いをはっきりとしたコントラストで描いていたら、いつの間にかひとりぼっちになっていました。
どうやらこの世界の多くの人は好き嫌いをふんわりとしたグラデーションで描いているらしいのです。
しかもそのグラデーションのふんわり感は人それぞれで、もしかしたら、そういうのを個々の価値観と言っているのかもしれません
そして、そういうのを
「お互い認め合いましょうね」
というのが最近の流行らしいのに
普通のグラデーションすら描けない私は認め合う仲間には入れてもらえません。
ある日、ひとりぼっちに耐えかねて
みんなが描いているようなグラデーションを
描く練習をした方が良いかもしれないと筆をとめて考えていました。
しかし、私は自分を仲間はずれにするふんわりグラデーションがどうにも苦手で
実は見ているだけでイライラするのです。
すると、
「君、なんかいいね!」
と私のイイネボタンをポチっと
通りすがりに押していった人がいました。
はじめてのことで驚きましたが
どうやら私はひとりではなかったようで
このままでもいいのだとホッとしました。
それから、
そんな通りすがりのイイネが少しずつ増えて小さなコミュニティができました。
そこでは色んな好き嫌いの描き方あって
わくわくする楽しい毎日が続いています。
すると苦手だったふんわりグラデーションもなかなかに素敵だなと思えるようになっていました。
だけど、私はこれからもはっきりとした美しいコントラストで描き続けていきたい....
ひと息つくと
私はまた筆をとり描き始めました。
お題「好き嫌い」
ガラスの手
ガラスの手に
負った傷を金で繕う
手に走るひび割れは
流れる星の軌跡のような
美しいタトゥとなった
でも、もう、これ以上
傷ついてほしくない
大切な大切な
僕だけのガラスの手
もう居ない
君から作ったガラスの手
#シロクマ文芸部
お題「ガラスのの手」から始まる小説・詩歌