#55 【元・正義のミカタの日常】
愛と平和のために戦い続けた正義のミカタ
かつての時代の子供たちの憧れ
彼はヒーローだった。
正義のミカタを引退した後は彼の事を知らない過疎地に落ち着き、妻とともに畑の世話をしながら
近所のお年寄りの為にささやかなボランティアもこなしつつ、平和な日常を送っている。
若いころの彼とよく似た青年に成長した一人息子は
かつての父親にあごがれて都会でヒーローをしているらしいが、最近は正義のミカタもジェンダレスとなり
流行りはヒロインであったり
父親の現役時代のように、
皆が同じように求めていた愛と平和はすでに流行遅れで、
今は、
それぞれの正義があり
それぞれの愛と平和もあって
それぞれを尊重しつつ
でも自分の大切にするものを見失うことなく.......と、
とにかく、
かつての時代より社会は複雑で
ヒーロー業も何かと苦労の多い様子だ。
でも、彼は信じている。
息子ならいつかきっと
素晴らしいヒーローになるだろう_。
日が暮れて、畑仕事を終え
家に帰ると笑顔の妻が迎えてくれた。
彼は暖炉の前に腰かけひと休み
うとうととしているとシチューの優しい匂いが漂ってきた。
身体をはって宇宙怪獣と戦わなくても
今夜も我が家は愛と平和で満ちている。
元・正義のミカタの彼は目を閉じたまま
今日一日の満足を噛みしめ
日常の愛と平和に感謝を捧げた。
お題
愛と平和
#54 【おばあちゃんのファンタジー】
施設に暮らすおばあちゃんに会いに行った。
施設といってもとても豪華なホテルのような雰囲気の所で、一緒に暮らしているお年寄りたちもとてもおしゃれで品が良く、みんなそれぞれ趣味を楽しんで生活している。
おばあちゃんは、数年前までは自宅で暮らしていたけれど、だんだん日常のことを忘れてしまうようになり
ここでお世話になることになった。
———
施設に入ってからのおばあちゃんは若いころのことを
よく話してくれるようになったのだが
あまりにも突拍子もなくて、周囲の人たちは認知能力の衰えたおばあちゃんのファンタジーだと思っている。
そのおばあちゃんのファンタジーによると…
諜報機関の職員だったおばあちゃん
(簡単に言うと「スパイ」ということらしい)
そのころのミッションは
当時の隣国に紛れ込んで軍事計画を偵察することや
ミサイル発射を寸での所で止めて戦争が始まるのを防いだこと
国王の暗殺計画を国民に気づかれないよう阻止したりしたこともあったそうだ。
そして_
隣国の大使館員との秘密の許されない恋。
でも、ママが言っていた
「おばあちゃんはほんとはとってもスゴイ人だから
この施設に入れるのよ」
確かにパパやママの収入ではこんな豪華な所におばあちゃんを預ける事は難しいだろう…
そして、
おばあちゃんの瞳は真っ黒なのに
ママと私の瞳は少し青みかかったグレーで
戦争時代のかつての隣国の人達にどこか似ている_
———
今、おばあちゃんは陽だまりいっぱいのテラスで椅子に腰かけ、ふと思いだす「過ぎ去った日々」を私に語りながら平和な時間を過ごしている。
そして、
私はいつかおばあちゃんの恋を小説にしたいと思っている。
お題
過ぎ去った日々
#53 【お金より大事なもの】
お金は大事なもののひとつではあるけれど
ある意味、日用品でしかも消耗品だ
お金より大事なものはひとそれぞれ
またはその時々の事情で変わる
何かよりも…と比較する所とは別の場所にあるもの。
#52
月夜に溶ける匂いはもう春
お題「月夜」
#51【理想の絆】
スローガンのように
唱えて結ばれたものではなく
自然に結ばれたものでありたい
必要があれば「はらり」と解ける
美しい結び目の__
お題「絆」