―逃れられない呪縛―
推しさんが出演しているCMは、つい見てしまう。
お菓子のCMなんてされたらお店に行く度に手に取ってしまう。
推しさんがTVや雑誌で、好きとか興味があるって言ったものは自分も気になってしまう。
これも一種の呪縛だろうか……?
―透明な水―
園芸用ホースのノズルを少し上へ持ち上げる。
ホースから出た水は、日の光を浴びて小さな虹を作った。
庭の水やりをする時の密かな楽しみ。
―理想のあなた―
恋人なるものが居たことがない。
なので、理想の人は?と聞かれても困る。
全然思い浮かべられない。
たまに誰かとお付き合いしてるのを想像してみるが最終的に「人の趣味を否定せず、推し活に協力的又は干渉しないで、喋らなくても一緒にいれる人」になってしまう。
つまり理想のあなたは要らない。
―突然の別れ―
そこは閑静な住宅街
向こうの方から茶トラ猫が走ってきた。可愛い。
その後ろを追いかけるように白猫も来た。可愛い。
2匹は道を挟んだ向かい側の塀のところで止まり、じゃれ合い始めた。可愛い。
私は2匹の邪魔をしないようこっそり見つめていたのに、そこへ男性の二人組が喋りながら歩いてきた。
すると、2匹の猫は驚いて別々の方向に逃げてしまった。
―恋物語―
貴方に会える日、朝からワクワクしていた。
髪を結い、青いワンピースを着て、忘れ物が無いか何度も確認した。
貴方に会えるのが嬉しくてバスの中では、ふわふわした気持ちだった。
待ち合わせの駅に着くと見知った顔にホッとした。
二人で新幹線に乗り、たわいもない話で盛り上がった。
「その服似合ってるね」って言われたのが照れくさかったのを覚えている。
そして、目的の場所に到着。
「あそこで写真撮ろう……横に立って」と言われ、私は貴方が写るポスターの横に並んだ。
「ハイ、チーズ!」
友人がカメラのシャッターを押す。
「上手く撮れた?」
「うん、何か恋する乙女って感じ」
「止めてよ。恥ずかしい……」
私は友人と大好きな推しさんの舞台を観に来たのだ。まぁ、恋してるっていうのも間違いではないのかも。
貴方に会えたあの日はとても幸せだった。
一生忘れられない日。