Title 死神の歌
悪い人は地獄行きだとか、良い人は天国に行けるとか誰もが耳にしたことあるだろう。私、夏美はどちらもできないまま、死神からの頼りが来た。
あれは、湿気を含んだ生ぬるい風が吹く夏の日だった。
トラックにひかれたんだったのかな、いや、車だった気も…それどころじゃない、私は死神に連れて行かれてる最中なんだから。
夏美「あの、私は何処に行くんですか?」
死神「!?、おめぇ喋れるんだな」
死神「普通のやつは死んでっから、死者の国に行くまで一言も喋れねぇよ」
夏美(なんでか知らないけど喋れるんだよな、ほんとに死んでる?私)
死神「…まぁいい、死んだ人は皆死者の国の広場へ行く、だがおめぇは例外だ、とりあえず死者の国の王に会いに行くぞ。」
夏美「地獄とかないんですか?」
死神「なに、おめぇ地獄いきてぇーの?ますます変なやつ」
夏美「いや違います、よく聞くので、良い人は天国とか、悪い人は地獄とか…」
私は生前特に悪いことをしてなければ、特別良いこともしてなかった。
こんな私に死者の国での居場所はあるのだろうか。
死神「ねぇぞそんな場所、おとぎ話かよ。あ、でも悪いことした人が罪を償う場所はあるなぁ」
〜死者の国〜
死神「ついたぞ、死者の国だ」
夏美「ここが…」
夏美(沢山の人…世界中でこんなにも?)
小さな子供から老人までそこには沢山の人がいた。しかし皆苦しそうじゃない。死者の国という名前だけど、温かい感じだった。
死神「受付をすませた、早速今から王に会いに行くぞ」
夏美(死者の国の王様か、どんな人なんだろう…)
〜宮殿〜
遠くから離れていても見える立派な宮殿。その下の街では商売も栄えてた。
ここで国王が過ごしているのだ。オレンジ色に反射した湖が綺麗な音を立てていた。
死神「失礼します。」
王「……はいれ」
死神「連れてきました。コイツが例のヤツです。」
夏美(王様、思ったより大きい)
王「お前か…お前が父が言っていた。特別な人間なのかもしれないな。」
死神「大王様がですか!?」
王「10年後死者の国へ来る魂のない人間とな…」
夏美「え!?」(私、魂なかったの!?初耳なんだけど!)
死神「そんなはずは!私は確かに魂を回収しました!」
王「それは父がまだ王のとき魂がないと色々面倒だから、偽の魂をつくり宿らせたのだ。」
死神「そんなことが…」
夏美「じゃあ私はどこに行けば…!」
〜一ヶ月後〜
私は今死者の国で、お手伝いをしています。
死神さんと一緒に魂の誘導をしたり、小さくして死者の国へ来た子達の面倒をしたりしています。そこは天国も地獄もない大きな空間でした。皆温かく、にぎやかです。ここに来たことを悔やんでる人も居ます。将来、天才歌手になると言われていた少年、今は死者の国で歌を叫んでいます。夢を見つけられず来てしまった人も中にはいます。どうか、今日を大切に。
Title 今日も君と見た月の奇跡を待っている
月を見ると、いつもあの日の懐かしい記憶が蘇ってくる。
そう、今日は26日目“有明の月”だ。
〜10年前〜
当時の私は5歳だった。中学生くらいの近所のお兄ちゃんが大好きで、お兄ちゃんと見る月はもっと好きだった。
近所のお兄ちゃん「明里見える?あれが“有明の月”だよ」
明里「キレイ…」
あの今にも消えてしまいそうな月に私は釘付けだった。
明里「なんで有明の月っていうなまえなの?」
明里「明かりはあんまし無くない?」
近所のお兄ちゃん「ふふっ、明かりが強く有るから“有明の月”ってわけじゃな いんだよ。」
近所のお兄ちゃん「この月はね朝まで消えないんだ。明かりは小さいかもだけど、朝までじっと有るんだ」
明里「他の星は消えて、お月さまは寂しくないのかな?」
近所のお兄ちゃん「きっと寂しいと思うよ。だから願おう」
“また逢えるように”
〜現在〜
懐かしいな。お兄ちゃん今どこにいるんだろ、元気かな。
近所のお兄ちゃんは高校生になって東京の都会へ引っ越していった。
ここは田舎だし夜は真っ暗、だから月と一緒に夜を迎える。
明里「やっぱ、小さな明かり」
主張の小さい光は目印にもなれずただ、朝をじっと待つしかできない。
明里「ん…朝か」
夜があけた。月の光もだんだん薄く弱まってきた。
明里「夜が明けても上空に残っているなんて…私みたいな月ね笑」
いつか逢えるだろう。今日も星に願った。