お母さんに言われた
「自分のこと僕って呼ぶの禁止ね
なんかいらっとくるし恥ずかしいから嫌」
納得できなかった
僕のことなのに、なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないの
呼び名くらい何でもいいじゃん
なんで女は「私」じゃないといけないの
男は「私」っていってもいいのに
考え方が古いよ
バカみたい
でも、そんなことに深く傷ついて、気にして、泣いてる「私」が一番バカみたい
泣かないよ
みんなから心配されるのなんて嫌だから
泣かないよ
先生に泣き顔見られたくないから
泣かないよ
君の困った顔を見たくないから
みんな、僕が泣かないと思ってるから
それを、裏切っちゃいけないから
君に嫌われるのがとっても怖いから
だから、僕は泣かないよ
泣けないよ
花束を渡された
中のいい女の子からだ
もしかして、僕好かれてる?
告白されたら…
面白くていい子だから付き合ってもいいな
うきうきしながら帰る道
中身は何かなっと
あれ、おかしいな
ほうせんか、ほうせんか、ほうせんか…
ほうせんかだけ?
花言葉を思い出す
「私に触れないで」
いつでも僕はひとりぼっち
親は必要最低限のものは用意するが、
それ以外は何を言っても無視する
クラスメイトも僕を空気のように扱う
この苦しみなど、誰にもわからないのだから
いつしか僕は救いようのない
深くて暗い闇の中に溺れていた
「明日は天気いいのか、でも、崖の上はやっぱり寒いかな」
思う
こんな僕が太陽と輝く自然に囲まれて
逝きたいと言ってもいいのだろうか
死ぬ場所は自由だ、しかしこんなやつが…
もう100回ほど結論づけたはずの疑問に
僕は光と闇の間で頭を抱えた
まだ、終わらせないで
君には計り知れないほどの魅力があるんだよ
その純粋な瞳
笑うとできるエクボ
みんなを笑わせるユーモア
その全て君が一番なんだよ
そして僕はその全てに惹かれているんだ
僕の近くにいろとも
ずっと笑っていろとも言わない
だから、まだ、
泣き崩れる僕を見て君は困ったように笑う
「ごめん、もう、無理だよ」
君の体が学校の屋上のフェンスの上で
ぐらりと揺れる
僕は手を伸ばそうとした、でも届かなかった
「バイバイ、君のこと、結構好きだった」
君は落ちた
笑っているようにも
泣いているようにも見えた
僕は頭が真っ白になるとは
このことかと理解した
僕は君が言った言葉を反芻する
一番終わってほしくないものが
崩れ落ちていく瞬間だった