もう一つお皿があったなら
お菊さんはあんなことになってないし
眠り姫も呪いにかけられずにすんだのかもね。
もう一つお皿があったなら
もう一つの物語が生まれていたのか。
いいや。
物語にならなかったかもしれない。
「もう一つの物語」
暗がりの中で 目を覚ます。
えっっ
どゆこと!?
今、何時?
ちょっと昼寝のつもりがもう夜じゃん。
こわー。
「暗がりの中で」
デートのプランを立てる。
季節の移り変わりや自然がすきな人だから、
山奥のワイナリーに行くことにした。
背の高い並木道を抜けると、葡萄畑が広がる。
ショップやカフェのある広場には、楓の木が何本も生えていて、赤、黄、緑の葉が日差しにきらきらと光る。
星型の葉っぱが降り落ちる。
そんな中、カフェでお茶をする。
葡萄畑を見渡せる、開放的なカフェ。
パンケーキのアイス添えとプリンを頼む。
パンケーキはスキレットパンケーキ。
いわゆるドイツ風パンケーキ、ダッチベイビーというやつ。
プリンはほんとはプヂン。
ブラジル風のプリン。
多国籍だな…
飲み物は紅茶とカフェオレ。
紅茶の茶葉は地元のものらしい。
葡萄畑と紅葉とスイーツと、
全てのものを紅茶の香りが繋ぐ。
「紅茶の香り」
言葉は、毒にも薬にもなる。
《純粋な愛の言葉》
〈用法〉
出し惜しみせずに、口にできる時には口にする。
〈効能〉
自信を与える。
口にした方もされた方も、多幸感を得られる。
「愛言葉」
こんにちは。
ぼくの友達の名前は
…名前は?
いつもそばにいたはずなのに名前がわからないなんて、
そんなこと、ある?
あれ?
そういえばこの子のこと、なんか知ってたっけ?
いつもぼくの隣でにこにこしてて、
話しかけるのはいつもぼくで…
そういえばこの子と会ったのはいつだった?
ずっといたはずなのに
なにも知らない
なにもわからない
「あーあ、気づいちゃった?」
思えばはじめて聞いたその子の声。
「じゃあ、おしまいだね。」
にたりと笑って消えてった。
「ぼくの…ともだちは…」
なんにもせずに消えてった。
これをぼくは喜ぶべき?
でもそれはぼくから友達が消えてなくなることで…
ぼくはこれをどう捉えたらいいんだろう。
「友達」