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4/2/2023, 12:49:28 PM

「消えたい。」
そんな思考が止まるような通知を見て焦って起きる4月1日、金曜日の午前6時45分。
焦りでスマホのパスワードを何度か間違え、僕は一度冷静になってパスワードを解除し、直ぐに通知が溜まったトークアプリを開いた。
数年間見てきた親友_冬和の面白おかしいアイコン。そこには先程と変わらず「消えたい」の文字。
僕が「え?どうしたの??そんなに急に」と焦りが伝わるような文章を書き、送信ボタンをタップすると、ほぼ同タイミングでスマホが音を鳴らした。
「嘘だよ。エイプリルフール。」
安堵か怒りか、それかまだ焦りが残っているのか、僕は思わずスマホを持っていた右手を布団に落とし、大きなため息を漏らす。

僕はそのまま「今日はちゃんと遅れずに学校来なよ?せっかく早い時間に起きてるんだから」なんて返信をささっと返し、ベッドからゆっくりと起き上がった。
冷たい水を顔に幾度かつけ、歯を磨き、ある程度髪を整えていると、この前冬和が遊びに来た時に置いていったんだと思われる小さな青い手鏡が目にとまった。
「あいつまた人の家に物置いてって…」
僕はその手鏡を学校の鞄の内ポケットにしまい、ガムをひとつ口に入れ、靴に足を突っ込んだ。
少し早足で学校に向かう道のりを20分ほど歩く。
シンプルに飾られた校門を通り、一番乗りで教室に入ると、廊下で先生が電話しているのが聞こえた。
盗み聞きなんてしようとした訳では無いが、少し興味本位で耳を傾けると、「冬和君が…!?」なんていう気になる声が聞こえてきた。
先生の焦ったような顔を見て、俺の頭の中に今日の朝送られてきた「消えたい」のメッセージが浮かぶ。
「まさかな…。エイプリルフールだし…。」
だが、次に先生が発した言葉は俺の耳にはっきりと入ってきた。
「と、飛び降り…!?」
瞬間、僕の頭で耳鳴りがする。
思わず体が固まり、少しづつ呼吸が薄くなっていく。

-その日、冬和は学校に来なかった。

4月1日、エイプリルフール。冬和がついた嘘は「消えたい」ということだと思っていた。

でもどうやら僕は違っていたらしい。
僕は、数年も一緒にいた親友の「嘘だよ」という嘘に、ちゃんと騙されたみたい。

-嘘だという嘘をついた-