【実力主義の能力学園に通う底辺の男が…】(2)
やっと授業が終わった。そのまま寝ておきたかったが、担任に校長室へ来いと言われたので歩いている。普段はあまり見なかった光景。様々な生徒が行き交いをしている。
海星「いて。」
通り過ぎに人とぶつかってしまった。とりあえず、ぶつかった相手の方をみる。そこには見知らぬ男が立っていた。気配でわかる。こいつはクラスランクが高いことを。
男「なんだよ低レベル。気安く俺に触れてくんじゃねぇ。わかったか。」
そういいながら拳を固め、今、勢いよく振りかぶった。僕は反射的に目を瞑った。しかし、その拳は僕には当たらなかった。
花奏〔かなで〕「気安く私の連れに触ろうとするな。私よりもレベルが低いくせに。」
花奏!なんでここに。というか助かった。まじありがとう。
男「そいつのほうがレベルが低いが、そんな奴を守って何になる。」
花奏「言っただろ、こいつは私の連れだ。こいつがいると色々と助かるもんで。」
男「だからなんだよ!」
声を張り上げた男は花奏に攻撃を繰り出していた。
海星「花奏、危ない!」
変にかっこつけたものの、それは意味をなさなかった。
海星「え?」
花奏の前にでていたつもりだった。だか、花奏は目の前に背を向けて立っていた。男は倒れ、気絶している。
花奏「佐々木、行くぞ。」
周りの視線が痛い。花奏はそれを気にしていなさそうだか、僕にとっては汗が出るほど緊張した。
人の少ない通路を通り、花奏は止まった。
花奏「佐々木、校長室はどこだ?」
海星「校長室?それなら…」
僕は花奏と校長室へ向かった。
花奏「そうか、ありがとう。ここからは私一人で十分だ。」
海星「僕も校長室に用があるんです。」
花奏「お前、まさか、『能力レベルがS』なのか?」
海星「その通り、よくわかったね。」
花奏「ありえない。こんな奴がSなんて。」
海星「能力だけでーす。」
そうして、僕らは校長室のドアを開いた。
海星「失礼します。」
空気は冷たく、微妙に甘い匂いがした。中には色々な生徒がいた。しかし、その仲にはEクラスの人間はいなかった。僕一人だけだ。
花奏「大体がAクラスだ。」
と小声で僕に話した。Aクラスかぁ。僕の感も言っていたがやはりそうか。その場の気配に気圧されながら、必死に立っていた。足がしびれている。動けねぇ。
『キィ〜』
ドアが開く音がした。皆が一斉に振り返る。僕も花奏もそちらに視線を飛ばした。そちらには、校長らしき、若い女性がいた。見覚えがない。いつも全校朝会のときに出ているようだが、全く話も顔も関心がなかった。本当にこの人が校長か?と思っていと。
にとり「やぁ、皆の衆。君等もご存じ。私こそがこの学校の校長だ。」
言い方からして、なんか癖強いやつ来た。
にとり「私の名前は、もちろん知ってるよな?」
海星「え?僕ですか?」
やばい。ろくに教師の名前覚えたことがねぇ。いろんな選択肢を思い浮かべて…。絶対この中にあるバスだ。…………………………………………………。
にとり「わからないか?」
海星「河城校長ですよね。」
にとり「下の名前は」
…はぁ?下の名前まで!?……………………………。
海星「にと…り?」
にとり「正解。よくわかったな。」
皆がこっちを観ている。なれない感覚だ。
にとり「私の名前は河城にとり。この学校では名乗ったことがないな。」
まじで!やっぱ僕の能力、こういうことでしか発揮できないからなぁ。これが、「感」。物を当てたりすることができる。実際、中学1年生の最初のテストで能力使って満点取ったことがある。しかし、その後は能力が使えない状態にさせられてやばい点数を取ったことがあるんだよなぁ。
にとり「君たちに集まってもらった理由はほかでもない。『能力ランクS』。これは、非常に珍しい逸材なんだ。だから、そんな君たちを育てるために、Sクラス授業を作る。もちろん君たちには参加しないという拒否権はない。全員何かしらの大きな事情がない限り、無断欠席は許さないよ。それだけ。」
海星「いつその授業が行われるんですか?」
にとり「それはだな…。未定。」
皆「未定!?」
にとり「まぁ、君等の担任から言わせるよ。他には?ないみたいだね。じゃぁ解散!」
えぇ〜。ほんとになにするんやろ。わからん。絶対面白くなさそう。そんなこんなで。僕たちは教室へと戻っていった。
【好きな色】
僕は生まれつき視界の中に見える景色が白黒だった。この症状は「色覚異常」って言うらしい。僕はこの障害を持って高校に通っていた。
海星「国語だる~。こんなん母国語じゃない。」
小さな声で隣の友達に話しかけていた。
花奏「あ?何いってんだ。お前がバカなだけだろ。理解しろ、理解。」
花奏は昔からの幼馴染。美女美人、成績優秀で賢く合理的な人物だ。もちろん。僕がこの障害を抱えて学校に来ていることも知っている。「カタカタカタ」。みんながノートやプリントに書き写す音が響く。だいたい授業はこんな感じ。先生が黒板に書いたことを写す。その単純な作業を何回も何回も繰り返しノートやプリントにまとめる。だんだんと眠くなったので僕は机にうつ伏せた。
海星「Where is here。」
ドレミー「やぁやぁ、いらっしゃ〜い。君はどんな夢を見たいかい?」
海星「へぇ。」
夢の中、だよな?夢で自由に行動できるっけ?いや、こんなの初めてだ。
海星「じゃぁ、1回だけでいいので、色を見してください。」
ドレミー「ほう。わかったぞ!では、良い夢を。」
そう言って消えていった。いったいなんだったんだろう。
海星「うあー」
地が揺れた。世界が崩壊している。僕はまた、気を失った。
花奏「起きろ。」
海星「?????????????」
花奏「はーやっとおきた。」
海星「もうちょい寝かせて…。」
花奏「だめに決まってんだろ。こっから残り2時間、授業が残ってんだからな。」
海星「今何時っすか?」
花奏「一時でーす。昼飯食べに行くぞ。」
僕は無理やり花奏の手に掴まれ、引きずられる形で食堂へと向かった。
僕らは食堂に着き、それぞれ注文を行って食事を机まで持っていった。
花奏「たくー、お前起きるの遅すぎ。」
海星「しょうがないよ。先生の呪文で眠らされたんだから。」
花奏「授業は睡眠呪文じゃねぇよ。ちゃんと勉強しろ。」
海星「勉強は社会人になっても必要にはならない。得た知識で活用するのは、家庭科と保健と数学ぐらいじゃねぇ?」
花奏「就職には学歴が大事なんだ。大学に入るまで頑張れ。」
勉強か。やるにこしたことはないがやらなくても良いと思う。
海星「あれは何色?」
花奏「そうだな。青めの紫色だな。」
海星「ありがとう。」
よくこうやって色を聞くことがある。だけどあまり理解できなていない。青めの紫色…?わかんない。色ってどういうものなんだろう。
ねっむ。午後の授業だりぃ~。僕は横目で隣を見た。花奏はいつも真剣だ。すごいな。集中力で僕が見てることすら見えてない。とりあえず、今のうちに寝るか。
またこの世界。
海星「これは…。」
またあの時と一緒だ地が揺れ世界が崩壊する。また起こされるのかな。
海星「あれ?え?」
見える景色が変わった。変わって見えた。脳がまた新たな障害を生んだのか?
ドレミー「おひさ~。」
軽快な声が背後から聞こえた。少しびっくりしたが。その女性をみたとき、胸がホッとした。
ドレミー「もう、急に元の世界に飛ばされるんだから、私、困ったじゃない。」
海星「この景色はいったい…。」
ドレミー「君はこれが見たかったんじゃないの?これは赤、青、黄色、緑、紫。他にもたっくさんの色があるわよ。」
これが、色。きれいだ。僕はその感情が抑えられず涙を流していた。
海星「これが、色なのか。生まれて初めて見た。ありがとうございます。」
ドレミー「ここは夢の世界。いつだって君等の目的の援助をするさ。じゃぁ、私はこのへんで。あとこれ。色の説明とかが書いてあるから必要なら使いな。」
そう言ってその女性は消えていった。
海星「さぁ、色を満喫しようか。」
end
【あなたがいたから】
【未来】
誰もがみんな自分の未来なんてわからない。未来が見えるわけでもないし、誰かが言ってくれたわけでもない。「だからなんだ。自分の未来はこれに決まっている!」という人もいるだろう。立派な理想をお持ちで。
人間には様々な可能性を秘めている。「現代社会では近いうちにすべて可能になる。」と聞いた気がする。しかし、「近いうち」と言われてもなかなか想像できない。なぜなら、その範囲が決められてないからだ。
範囲というのはスタート地点からゴール地点までの間の距離のことを指す。範囲が指定されていることによって、人間は無意識に頭の中で具体的な数値を表す。「車の中に1〜10人」