記憶の海で泳ぐ
君はいつからか
忘れ
覚え
いつかの波際でのあの抱擁を
ざばんざばんと波打ち際の涙を
遠くの国のあの人へ
ほんの少しだけ
ほんのひとかけらだけでも
届くと信じているのだろうか
今でも今でも






「記憶の海」

これはもう
無駄だと捨てることを努力し始める







「届かない……」

夜が明けた。

そのたった一つの言葉で人々は安堵した。
希望が産まれた。
素朴で忍耐強い男が、耐えきれず思わずつぶやいた。
たった一つの願いだった。
その後
男は英雄となった。
あやふやな夜明けがいつまで続くのか
男は不安になった。





「夜が明けた。」

招いてはいけない
この瞬間に気づいてはいけない
ふと
気づいてはいけない
忘れろ
思い出すな
…の瞬間
おぼろげな毎日を脅かす真実の瞬間





「ふとした瞬間」

日差しは太陽
春恋は棘
突き刺さる





「春恋」