君を好きになったきっかけは
 その先にある未来を常に見据えて
 どんな逆境にも怯まず立ち向かっていく時に
 ふいに見せる
 その挑むような鋭い眼差しでした
【鋭い眼差し】
 高く高く飛べるようになりたい
 そう望んで見上げていた場所へ
 この手が届くようになると
 さらにもっと高い場所へと
 手を伸ばしたくなる
 いつかどこまでも高く
 飛んで行けるようになったら
 今度はきっとこの世界の広さを
 確かめたくなるのだろう
【高く高く】
 子供のように無邪気な顔で。
 周囲に笑いかけている彼女が。
 本当は嘘吐きなことを知っている。
 実はすごく頭が良くてけっこう打算的。
 おっとりしてそうな雰囲気を出しながら、しっかり者なうえ、どことなく完璧主義な彼女。
 疲れたと言って仕事の愚痴を吐き出し。
 ストレスから来る頭痛に時々悩まされている。
「ごめんね。こんなに情けなくて」
 月に一度の頻度でナーバスになる彼女は、耐えきれなくなると涙を流しながら僕に謝罪する。
 子供のように泣きじゃくりながら、僕に八つ当たったり、ワガママを言ったり、手のひらを返したように甘えてくるものだから。
「そう? こんなに泣いてる君を見るなんて貴重だから、僕は役得だと思ってるけど」
 お茶らけたようにそう言えば、泣き顔のままポカンと口を丸くした彼女が、次の瞬間、「そんなこと思うのはきっと貴方だけだよ」と、フフフっと口元を綻ばせた。
【子供のように】
 あれ。どうしたの?
 そんなところに突っ立って。
 ああ、もしかして先輩と待ち合わせ?
 委員会、さっき終わったから、たぶん、もうすぐ来るよ。
 うん、行っても大丈夫だと思う。
 誰かいても副委員長くらいじゃないかな。
 あ、うん、またね。
 また明日。
 嬉しそうに微笑んで私の隣を横切っていった彼女を、私は何とも言えない気持ちで見送った。
【放課後】
 辛くても、悲しくても。
 君が全然泣かないから。
 だから、代わりに。
 泣いてあげてるんだ。
【涙の理由】