作品No.227【2024/11/13 テーマ:また会いましょう】
※半角丸括弧内はルビです。
「まったく」
私は、振り向く。そんな一動作でも、美しく優雅に、を心がけるのを忘れない。
「全然なっていませんわ」
私の視界に映るのは、倒れ伏して動かない男達。ざっと十人はいるだろうか。動かないが、全員死んではいない。命まで奪(と)るつもりは私にないのだ、当然気絶までに留めている。
「私に指一本触れられないばかりか、私一人に全滅させられるなんて、本当にがっかりですわ。もう少し骨のある方々かと期待していたんですのよ」
ここ最近、私を付け狙っている人達がいるのを知っていたから、どんな強者(つわもの)や猛者(もさ)かと思っていたのだ。それがまさか、女の私に軽々と倒される連中だなんて、期待外れもいいところだ。しかも、何人かは逃げ出してしまっている。叩きのめされる仲間を放置して、だ。
この私が誘拐されるかもしれない——なんて、ほんの少しドキドキしていたというのに。心身共に弱い男達が徒党を組んでいるだけのつまらない集団に、私は何を期待していたのだろう。
「本当に、期待外れですわ。がっかりです」
私は歩き出す。もう、この男達に興味など皆無だった。いや、完全に無くなった、というわけでもなかった。ほんの少し、まだ期待していた。
「もしまた私を狙うおつもりなら——そのときは、今よりも少しは、強さを身につけていらしてくださいね」
誰も私の言葉など聞こえていないだろう——そう思いながら、さらに言葉を紡ぐ。
「また会いましょう」
作品No.226【2024/11/12 テーマ:スリル】
スリルなんていらない
平穏無事な一日が日常であればいい
変わったことなんて
起きない方がいい
そう思うのに
変わらない
変わり映えしない
日常が物足りないなんて
ワガママだよね
作品No.225【2024/11/11 テーマ:飛べない翼】
空を見上げた。
煌々と月が輝く空を切るように、仲間達が翼を広げて飛んでいる。美しい色が、月光を反射して、視界を彩っていた。
自分だけが、地べたに座り込んでいる。仲間達を見上げることしかできない。
仲間達と同じように、自分にも翼はあるのに。
飛べない自分がひとりきり、ただ夜空を見上げ続ける。
作品No.224【2024/11/10 テーマ:ススキ】
大学生のとき、実習でフィールドワークをした。
そのとき、ススキ、というか、イネ科の植物に寄生するナンバンギセルという植物があると教わった。宿主の養分を吸って生き、その宿主が枯れたときはその生を共に終える……らしい。
なぜかそれに、ものすごく、心惹かれたのを憶えている。
自分の力で生きていくよりも、誰かに養ってもらって生きていく方が自分に合っているように思うからだろうか。
当時もうっすら思ったことだが、なんともまぁ……よろしくないというか、だめというか、しょうもない思いを抱いたものである。
作品No.223【2024/11/09 テーマ:脳裏】
脳裏に焼きついて離れない
あの景色
あの歌
あの本
あの絵
あの人
記憶にあるのに思い出せない
あれやこれや