私は雨女だ。
卒業式も、成人式も、雨だった。
そんなのは偶然で、科学的根拠は何もない、と言う人も居るだろうが、一人旅も高確率で雨になるのだから、真面目に雨女なのだ。
だがしかし、雨が降って欲しい体育祭やマラソン大会は晴れるのだから、全く使えないスキルだ。
そんな私に転機が訪れた。
超強力な晴男を好きになってしまったのだ。
そいつは、大学のゼミの先輩で、私とは全くの正反対で、揚げ足取りの嫌なヤツなのだが、観たい映画だけはピッタリ合うのだ。
天気予報では、台風の影響で今夜からしばらく雨らしい。
それでも何かの間違いで、もし明日、万が一、晴れたとしたら、告白しようと思っている。
幸せを一つ拾う度に
心のパズルが埋まって行く
わたしが失くした
わたしが置き去りにした
わたしが捨てた
わたしがずっと欲しかった
幸せを一つ拾う度に
怖くなる
だから 一人でいたい
今まで飼った動物は、犬、猫、うさぎ、ハムスター、モルモット、ジュウシマツ、インコ、カメ、ザリガニ、金魚、ナマズ、メダカ…
幼児期以降の人間以外の動物は皆、澄んだ瞳なのではないだろうか…?
傍らに眠る猫をジーッと見ていると、視線を感じたのか突然起きて振り返った。
何タダで見てるのよっ?
チュー◯を献上しなさいよっ!
って顔だ。
全くツンデレのツン9割なのだが、それでもやっぱり瞳は澄んでいるように見える。
嘘が無い…からだろうか…?
嵐が来ようとも
誰かが守ってくれた幼少期
嵐が来ようとも
見て見ぬふりをしていた青年期
嵐が来ようとも
動じない心が欲しいと思った壮年期
嵐が来たら
避難して待つ事を覚えた老年期
祭囃子が聞こえる。
だんだんと近づいてくる。
半分夢の中でも必死に考える。
いつ寝落ちしたのだろう…
傍に落ちたスマホの充電はカラだった。
ケーブルに繋いで、生き返った画面を見たら、一気に目が覚めた。
彼女の愚痴を聞いている最中だった。
LINEの最後には一言。
『大嫌い』
〝別れる〟じゃなくて〝大嫌い〟
そんな事で少し安心する。
電話をかけ直しても出てはくれない。
ま、想定内。
『花火を見に行こう』
と、LINEをしてみたら既読スルー。
ま、想定内。
さ、シャワーを浴びて、迎えに行くか。
子供の頃から、花火は一緒に行っていた。
約束する事もなく、なんとなくいつも。
慌てて大事な物を忘れないように…
スマホと一緒に置く。
もう代わりなんて考えられないから。