遠くから足音が聞こえてきます。
あの人が帰ってきたみたい!
ドアがガチャリと開きます。
「わん!わん!」
僕は尻尾をふって飼い主さんを迎えます。
「お〜!元気にしていたか?」
そう言って、僕の頭を撫でてくれました。
ねぇ、今日は何をしてきたの?
はやく僕に教えてよ!
もう、秋ですね。
風が涼しくなってきました。
秋は物思いに耽りやすい季節ですね。
こんな季節にはあなたを思い出します。
私の初恋の人。
あなたは元気にしていますか。
そっちはどうですか。楽しい?
それとも、寂しい?
私は今夜あなたに会いにいこうと思います。
あなたは喜んでくれますか?
どうして、あなたは旅をしているの?と誰かに聞かれたことがあります。
一体、誰だったか。忘れてしまいましたが。
なぜでしょう。自分でもよくわかりません。
でも、旅をしていると安心するんですよ。
例えば、旅先で出会った人と会話したりすることとか。
人生って旅みたいなもんだ、と僕は思うんです。
迷っては、誰かの助けを借りてまた歩いていけるとこが。
だから、僕は旅を続けていきます。
今までも。これからも。
ずっと。
いつからだろう。
世界から色が消えたのは。
何日まえ?それとも何年まえ?
色が消えてから昼と夜の区別もつかなくなりました。
いえ、つくにはつくのですが。
誰も、空を見上げなくなりました。
どこを見ても、白、黒、灰色だけ。
人々の心はすさんでいきました。
僕はどうかって?
全然変わりません。
むしろ、生きやすくなったかも。
世界中のみんなが僕とおんなじ景色が見えるようになったんですから。
知っていました、永遠なんてないって。
だけど、こんなすぐにお別れになるだなんて思ってもいなかった。
どうして、あなたは私を置いていってしまったの?
あなたはきっと、「僕のことを忘れて。」というのでしょうね。
忘れてやるもんですか。
絶対に忘れてなんかやらない。
あなたの最後のお願いを叶えるつもりは毛頭ありません。
私はこれからもあなたと笑って生きていきたかった。