私は蝶を追っていた
蝶はひらりひらりと舞っていた
蝶は風にあおられた
私は手を差し出した
蝶はくしゃりと私の手に落ちた
いや、
枯れ葉はくしゃりと私の手に落ちた
「私!絶対明日から本気出すんだ!今日までの私にさよならして、明日からは新しい私として生まれ変わる!
がんばるぞ!」
通算359日目
「どう?この被験者本気出しそう?」
髭を生やした男がモニターを見ながら茶髪の青年に聞いた。
「いやぁ、ほぼ一年何も変化が無かったんでもうキツイんじゃないっすかね」
髭を生やした男はしばらく考え込み
「そうか、じゃあコイツとは今日でさよならだ」
真顔でそう言い放った。
よく笑いを取る人は笑いの神のお気に入りかもしれない
腹痛を起こす人は腹痛の神のお気に入りかもしれない
そして今、私は腰痛の神に気に入られたのかもしれない
同僚S曰く
「まぁ、しょうがないんじゃない?あんなハードスケジュールを毎日でしょ?そりゃ死にたくなるよ」
そのアイドルは誰よりも輝いていた
容姿にパフォーマンスにトークどれをとっても一流だった
しかし、その輝きはアイドル自身の目を閃光弾のように潰してしまい、アイドルは自分自身を直視できなくなってしまったようだ
(〇〇年▲月✕日発行 週間文花 衝撃!人気アイドルの自殺 同僚Sが語る衝撃の真実!より一部抜粋)
10年後の私から手紙が届いた マジで マジマジ
「え!マジで!10年後の私ヤバwww
えー、なに書いてんだろ!
まだ彼氏できてなかったりしてwww、流石にそれはないわ!」
やけにピンク色の封筒から手紙を取り出した
「じぅねんまぇのゎたしぇ
バナナオレです!(ゎたしのことだょ!)
このまぇ17人めのカレと別れちゃったぁ
でもへぇき!新しくヤマトくんってぃう!ちょーやさしぃカレができたの!それでぇ……」
私は今までの習慣から交友関係まで自分の全てを見直し、心を入れ替え勉学に励んだ
そして十年後、職場である研究所で出会ったヤマトと名乗る男からやけにピンク色の封筒を渡された
封筒には
「十年前の自分に手紙を送ろうプロジェクト」
そう書かれていた