「よし!やっと外に出られる!」
そう思って僕は羽化したのに。
とてもじゃないけど鳴いていられない。
羽が焼けちゃうんじゃないか!?ってぐらい熱い。
折角外に出られたのに……。
次はたくさん…そとにで…………………。
ーーーーーーーーー。
グシャッッ
【太陽】
この汚い世界。
君にはどう映るんだろう?
その澄んだ瞳は、僕と同じものを見ているのか。
……僕には想像もつかないものが見えているのか。
【澄んだ瞳】
そうか……隣の国は嵐で死亡事故が起きたのか……
その嵐が勢いを変えずこの国にぶつかる?
「心配」?
アハハハ!
まったく、これだから新人くんは……。
いいかい?
ここは全てがコンピュータに支配された国だと新人研修で教えられただろう?
結婚相手から子供の数、趣味嗜好や働く場所、食事。
他にも気候や病気、災害でさえもコンピュータの管理下にある。
『この国にいる間は天災なんてものはないんだよ。
地震や津波が来て多数の死亡者が出た場合はね……
コンピュータがいらない生物を排除するためにわざと起こした機械的災害なんだよ。』
……ほら、ここのモニターを見てごらん
コンピュータが今嵐と同じ熱量をぶつけて相殺しているところさ
本当に心配すべきは嵐なんかより、『どれだけコンピュータに貢献できているか』を心配すべきなんだよ。
【嵐が来ようとも】
貴方の懲役はあと80年と10ヶ月と3日です。
途中で事故にあったり自殺された場合は、新しい人生が始まりますのでご注意を。
事故の場合はまた最初から。
自殺の場合は罰金として次の人生から幸福度が引かれます。
この人生で地獄から天国に帰って来られるといいですね。
【神様が舞い降りてきて、こう言った】
誰かのためになるのなら、私の大切な物を差し出しましょう。
えぇ、もちろん。私自身の命でも家族の命でもお金でも何だって構いません。
だって私は"良い人"だから。
"良い人"は他人のためなら命だって借金だって自分を顧みずに助けてくれますもんね?
【誰かのためになるのなら】