時計の針
君を抱きしめながら
ちらりと上を見る
壁にかけられた時計は
もうすぐで十一時を示す
時計の針が刻限を指した時
君を帰さなければいけない
帰したくない、離れたくない
でも
君が大事だから
ちゃんと帰してあげないと
君と言葉をかわしながら
時計の針をチェックする
時間に遅れないように
だけどなるべく長く
君といれるように
溢れる気持ち
また、失敗しちゃった
君が、寂しそうに笑う
君は誰よりも頑張っていた
君のこと、ずっと見ていたから
僕は知っている
君にとっての僕は
ただ応援してくれる友だち
ちょっとだけ愚痴を言って
それですっきりする相手
それも、僕は知っている
だけど、そんな君を見続けるの
もう耐えられないよ
僕にとっての君は
大好きで、大事で、傷付いて欲しくなくて
思わず君を抱きしめる
君は戸惑っているだろう
ごめんね
でももう、こんな関係は嫌なんだ
Kiss
君にしたいことがある
君にしてほしいことがある
突然だったら
驚かせちゃうかな?
でも、そしたらどうすればいいんだろう
なかなか切り出せない思い
なかなか進歩できないふたり
僕たち、付き合っているんだよね?
だったら、してもいいのかな
まだ唇じゃなくてもいいんだ
君にしてあげたい
君に、してほしい
1000年先も
穏やかな風が吹く丘から麓を見下ろす
復興が進んだ町は活気づいていて
数年前までの戦の傷痕はうかがえない
ようやく訪れた平和な光景
この先も続いてほしい
歴史は繰り返すという
だからこれは叶わぬ願いなのだろうけれど
1000年先も平和でありますように
勿忘草(わすれなぐさ)
転校がきまった私に
君がくれた小さな花
私は何も知らないガキだったから
ただ可愛い花としか思ってなかったけど
いつも本を読んでいる君は
きっとこの花の意味を知ってて
私にくれたんだね
まだ覚えていてくれているかな
私は忘れたことないよ
手に持った文庫本に
すっかり色褪せてしまった
押し花の栞を挟んで
車窓の外を見る
懐かしい町がもう目の前にある