タイトル【嫉妬】
文字数 575文字くらい
公園に設けられた青いベンチに座って、自販機で購入した缶コーヒーを飲みながら、覚醒した時のように惚けていると、電球頭の男がひとり、公園に入って来た。
遠目ゆえ、歳はハッキリと知れないが、仕草から察するに若く見える。三十、いや、下手するとそれより若いと思われる。
公園に誰が入ろうと、気にも留めないのが普通だろう。しかしその男は違った。それというのが、何を思ったのか猿の如く木に登るや否や、狂ったように葉を毟り始めたのである。まるで羅生門の老婆だ。きっと気狂いに違いない。
眼前で何かが起きれば、気になるのが人のサガというやつで、無論、それは私もそうであった。
男に近付いて私が下から、
「何をやってんですかい?」
その声を聞くと、男は振り返ってつとめて和かに、
「いえいえ、ただの憂さ晴らしと言いますか、嫉妬のようなものですよ」
「どういうことで?」
「木はね、寒くなると葉を散らすじゃないですか。それで温かくなると新しい葉が生える。ぼかぁ、どうもそれが許せないのです。人は禿げりゃあ、二度と生えない場合が殆どでしょう。僕は見ての通り、こんな頭ですからね。まだ二十歳だってのに。頭はてらてらと眩しいのに、毛髪はお先真っ暗ですぜ。ですからにくいのです。何度でも葉を生やす、木の野郎が」
その答えを聞いて、益々この男は気狂いだと、私は思った。
精一杯の抵抗 時間は知らない顔 引っ張られる手
明日も多分同じ 繰り返し それなのに期待している
自分に似ている他人は好きで、
自分に似てない他人は嫌いだ。
好きなれないから嫌う。
自分が嫌いなものを好いている輩も嫌う。
自分が好きなものを嫌っている輩も嫌う。
中々好きになれないのに、
かくも容易く嫌いになれるのは、
なかなかどうして、人とは不思議なものである。
誰よりも一番近くにいて 誰よりも一番遠くにいる
溜め息の色した現在地 それほど好きでもない毎日
いつからなんだろう 上手に笑えないや
小指に残された温もり 呼吸を続ける意味はどこに
もう一度最初から出会いたい
あなたの居る明日を迎えたい
こんなにも怖いと思うのはなぜ
こんなにも寂しいのはどうして
希望 絶望 欠伸が出るほど繰り返す事
せーの、でここから離れよう
それでまた会えたら ゆっくり話をしようよ
あなたは私には成れない
私があなたに成れないように