泣くことを我慢して、
いつ笑うというのだ。

凍った世界　秋はもういない

タイトル【未完成】
文字数　300文字くらい

ある男がいた。
彼はいつもどこか抜けていた。

例えば食事。彼はいつも一品だけ食べ残す。
例えば本棚。並んだ本は何故か最終巻だけがない。
例えば映画。エンディングが流れる前に退場する。
例えば服装。ボタンはいつも一つだけ外していた。
例えばつめ。いつも指一本だけ切らずにいた。
例えばパズル。いつも1ピースだけ欠けていた。

「どうして、そんなことをするの？」
ある日、誰かがそう尋ねた。
すると、
「こうすれば、いつまでも完成しないだろう？」
と揚々と答えた。
「完成すれば、終わってしまうからね。終わるのって寂しいじゃないか。だから僕は、終わらせないために完成させないことにしているのさ」

愛情とは支配に似ている。

微熱。

躰は熱いのに、
肌寒いのはどうしてかしら。

意識はボンヤリしてるけど、
意外とハッキリしてるのはどうしてかしら。

安静にしてるのに、
苦しいのはどうしてかしら。

不思議　不思議　摩訶不思議。
不思議　不思議　あら不思議。