5/20/2025, 2:30:57 PM
『空に溶ける』
灰幕の雲に翳る夢は
微かな願いを永遠に置き去る
暗澹の狭間から零れる光に
淀みざわめく残響音
冷霧の間隙を這いずり回る
その滲む影を見た
刹那空に溶けたかのような
朦朧の間際に堕とされた
暗澹 : あんたん
5/13/2025, 3:30:18 PM
『記憶の海』
可惜夜の微睡みの最中
惑溺の願いは虚構の夢へと誘う
青藍の若葉が溢れかえる樹林のごとく
ただ淀みの中を彷徨うように
空夜の夢現の最中
憶那の響きは空漠の果てへと誘う
想愁の悲哀に昏れる戯言はいつの日か
もう戻らないと知っているのに
可惜夜 : あたらよ
夢現 : ゆめうつつ
憶那 : おくりな
3/13/2025, 10:40:19 AM
『透明』
淀んだ霧雨が窓をつき
庭の水面はゆらぎざわめく
霞に沈んで彷徨っては
つまずきころんで泣いている
遠く離れた静寂の中
何かを忘れて泣いている
弛んだ空気に噎せ返っては
鈍色の孤独が邪魔している
透明なたったひとつの欠片が
冷たい頬から零れぬよう
錆びた思い出を忘れぬよう
涙を堪えて笑っている
3/8/2025, 1:15:17 PM
『秘密の場所』
あなたと歩いたあの軋む想い出は
夜に翳る霞んだ光のよう
変わり続ける掠れた旋律と
木漏れ日に濡れた小さな言葉
それは凡て朽ち果て忘れ去られたとて
未だわたしの胸懐に小さく揺らめいている
だから遠い遠いあくる日の
独りよがりの静寂(しじま)を越えて
あなたにまた会えますように
1/29/2025, 2:58:21 PM
『日陰』
小さな脚音鳴りひびく
裏路地猫は帰路につく
荒れた故郷に白痴の音
枯れた樹木の落とす陰
木漏れ日は舞いおどり
水平線に暮れる夕陽は
朧気な憂鬱を攫いゆく