【世界の終わりに君と】
歪んだ関係を直すため。世界の終わりに君とキスしよう。明日の自分に後悔はないかと、問いただすため。いや、明日なんてないのだけれど。
「キス甘かった?」
「知らないよ。」
ウブな顔して純愛じゃない。なれなかった。君はあの子に、私は君に。
「最後なのによかったの?」
「世界の終わりだもんね。」
昔の馴染みでしょ、なんて笑われる。私が拗れていなければ。
「クズみたいな顔。」
「クズなんだよ。」
もし、もしもしも。勇気をだして好きだと伝えていたら何処まで続けられていたんだろう。ふいに頭を占める思考。駆り立てられた。言わなきゃ、って。
「ずっと好きだったよ。」
「もう遅いよ。」
あー、やっぱりだ。そっか、わたしが歪んでいなければ。早いうちに気づかせてくれればよかったのに。クズみたいなこと言うねって、前置き。
「世界の終わりに君とキスしよう。」
【最悪】
最悪だ。こないだから始めたダイエットは続かない。好きなあの子には恋人が出来てた。全部始めるのが遅すぎたのかも。そんな中聞いたあの子お前に気があるらしいよの噂。そんなの期待するしかないじゃないか。
「好きだったよ。」
過去形だった。どうやら、痩せてしまった僕はタイプじゃないらしい。あー、やっぱり最悪なんじゃないか。
【誰にも言えない秘密】
誰にも言えない秘密は女の武器だってお母さんが言っていた。だから、私は秘密を作った。嘘を吐いた。このリップを塗ると勇気が出るんだってさ。ヘアセットは気分で元気さも違う。私にとって私が可愛くなるための嘘。
「アンタは世界一可愛いよ。」
そう言って、彼女は私の少し乱れた前髪を正し始めた。
「貴方の娘だからね。」
それが口癖。私はこの人の娘。だから、世界一可愛いんだ。
【狭い部屋】
この狭い部屋でコーヒーを飲みながら落ち着いてテレビ見たり友だちと電話したりするのが俺の趣味。なんてったって広い部屋は落ち着かない。家族と住んでる時はとても広い部屋だった。家が二階建てでいわゆる豪邸って言われるようなだから、嫌だ。あの人たちをもう思い出したくはない。
「逃げたんでしたっけ?」
「そ、だから近づかないの。」
嫌になるね。広い部屋で人の死体を見るなんて。それも小さい頃。トラウマもんだろ。
【失恋】
私が言えないことってなにがあったっけ。あー、昔のこと。失恋したって、大きな悩みを抱えたって、なんでも言えた。でも、昔のことだけはそれだけは言いたくはなかった。
「いつになったら言ってくれんの。」
「君が離れるって知ったならもう言わないよ。」
だから、言えないって。言わないって。君が離れてしまうから言わないって。