【突然の別れ】
誰が信じるだろう。突然の別れと言われても実感があるわけでも現実味が急に湧いてくるわけでもない。それでも、別れたんだ。今更、言葉足らずを気にしたって不健康さを笑ってくれる人はいなくなった。あの時、飲み会なんて言わずにちゃんと手料理をふるまってもらえばよかった。沢山思い出があって、沢山の想いを抱えて生きてきた。悩んで、悔やんで。
「失格だったかな。」
きっと、いい人にはなれていなかった。最初から見てたわけじゃなくて途中から許されただけ。偶然、彼女の強さと弱さを見守る機会を許された。それだけ。
「笑ってよ。」
世界一綺麗な君。笑わせてくれてありがとう。
「結婚おめでとう。」
【恋物語】
こんなことになるなんて誰が想像していただろう。告白されるならもっと早めに予兆が欲しかった。心の準備、焦った僕の恋物語。なんて、無様で綺麗とはとても言えないような馬鹿みたいな物語。優しい顔して突き放すからだ。
「ごめんね、諦めて。」
何も言えなかった。焦って伝えなければそうなるなんて誰も言ってくれはしなかった。
「諦めなくてもよかったのに。」
【真夜中】
真夜中にバイク走らせて風が気持ちいいって言って笑ってった。おかしいね、なんて笑えてしまうから最強だった。
「あー、死んじゃった。」
天使がいれば多分お前は天国にいる。悪魔じゃないから。それでも、悲報は何故か来る。事故って即死。そんなもん。嘘だと思った。何回も言った。それでも、本当。汚い感情抱えて飛ぶ勇気すらない。
「最強だったから。」
【愛があれば何でもできる?】
愛があれば何でもできる? そんなの嘘に決まってる。愛があっても、魔法少女にはなれないし大切な人を守れるわけじゃない。
「愛があれば何でもできるよ。」
そう言っていた大切な人は私の消えないでという願いをよそに私の目の前から消えて行ってしまった。だから、愛があれば何でもできるなんて嘘なんだ。でも、今なら分かるよ。安心させたかったんだ。本当に守りたかったんだ。
「今なら私愛があれば何でもできるよ。」
「嘘だよ、そんなん。」
私の前に立って大きな目から涙をぼろぼろと溢していくかわいい子。魔法少女にはなれなかったし昔、同じことを言っていた人は私の目の前から消えてしまった。でも。だからこそ。独りじゃない。
「お待たせ、待った?」
「ちょっと、待たせ過ぎ。うちの可愛いリトルプリンセスが泣いてんの。」
だから、愛があれば何でもできてしまうんだ。あの人は一人だった。でも、私は独りじゃない。だから。
「愛があれば何でもできる?」
「今ならできるよ。」
魔法少女じゃない。特殊能力があるわけじゃない。ただ、愛があっただけ。
【後悔】
あの時のやっときゃよかったは心の消化不良になっていくだけでちっとも報われてくれやしない。どうすりゃよかったのかなんて出てきても今更過ぎる。
「分かるわけねぇだろ。」
心に留めておくつもりだった言葉が勝手に外に出るのなんていちいち気にしてなんかいられない。分かるわけないをそのままにするなと言われたからだろうか。それとも、彼女の間抜けさが気になったからだろうか。きっとそうだと思う。
「何、一人でぶつくさ言ってんの?」
また、分かるわけないでも見つけたかと喜々として聞いてくる彼女は俺の気なんて全く知ったこっちゃないらしい。
「いいだろ、別に。」
「よくない、そのままにするな。」
ほら、これだ。探せると期待させる。届くと思わせられる。左手の薬指に光る指輪がチラつくからすぐに現実に引き戻してくるんだ。ただでさえ、遠すぎるっていうのに。もっと、遠くなっていくんだ。
「結婚、半年でしたっけ。おめでとうございます。」