【後悔】
あの時のやっときゃよかったは心の消化不良になっていくだけでちっとも報われてくれやしない。どうすりゃよかったのかなんて出てきても今更過ぎる。
「分かるわけねぇだろ。」
心に留めておくつもりだった言葉が勝手に外に出るのなんていちいち気にしてなんかいられない。分かるわけないをそのままにするなと言われたからだろうか。それとも、彼女の間抜けさが気になったからだろうか。きっとそうだと思う。
「何、一人でぶつくさ言ってんの?」
また、分かるわけないでも見つけたかと喜々として聞いてくる彼女は俺の気なんて全く知ったこっちゃないらしい。
「いいだろ、別に。」
「よくない、そのままにするな。」
ほら、これだ。探せると期待させる。届くと思わせられる。左手の薬指に光る指輪がチラつくからすぐに現実に引き戻してくるんだ。ただでさえ、遠すぎるっていうのに。もっと、遠くなっていくんだ。
「結婚、半年でしたっけ。おめでとうございます。」
【風に身をまかせ】
この時間が好きだ。風に身をまかせて自由になれるこの時間が好きだ。自転車で走っているだけ、好きな人の隣で。私に夢を見させているような幸せな時間。私に現実に戻ってくるなと言うような幻の時間。
「ねぇ、いつになったら戻っていいの。」
「まだ駄目だよ。」
まだ、向こうが危険だからとこの好きな人とやらは私を夢から離してくれない。
【お家時間でやりたいこと】
お家時間でやりたいことたち。ゲーム、睡眠、歌、物づくり、映画鑑賞。趣味は多くしとけってよくじーちゃんの口癖。なぜか、気にかけてくれてるのか俺になにかとアドバイスしてた。普段は寡黙なくせに俺が困って行き詰ってる時だけ探して見つけてくる。本当すごい人だった。
「良いじいちゃんじゃん。」
「だろ。でも、アドバイスはくれんのにあーしろとか言わなかったんだよ。」
全部、最後にゃお前が決めることって。じいちゃんはかっこよかった、死に際も。
「なぁ、知ってる? 俺のじいちゃんや他の人も一部悪魔に殺されたんだって。」
【子供のままで】
いつからか、自らの容姿を幼い子のようにしていた。子供のままでいたいとかは特になくてつまらんから、なんだと思う。
「そろそろ、上から見るのも飽きた頃ってかつまんないよぉ。」
「仕方ないだろ、私らはそれが仕事なんだ。」
人里からははるか上、雲のそのまたその上の。天界とか言われる場所。そこで、人々を見守って時には助けるのが私たちの役目。そんな、ギリシャ神話に出てくる皆が知っているような神様なんかじゃない。でも、大切な仕事だから。
「てか、その恰好いつ見ても小さくて不便そうだ。なんで、自分で姿変えられるのにそんななりしてんの?」
「特に意味とかはない。ただ、なんとなくだ。」
そう、なんとなく。きっと理由はない。ただ、本当につまらないから。ねぇ、神様。つまんないよ。退屈だよ。もし、神様がいるなら何か楽しいことがしたい。
「あー、神様って私か。」
【愛を叫ぶ。】
クサいだろうか。おかしいだろうか。それならそうと笑ってくれ。でも、これしか知らないんだ。
「好きだ!」
この声があの人の元に届くように精一杯叫ぶ。ただ、愛を叫ぶ。不格好だろうと、失笑されようとめげない負けない貫き通せ。一言だけどもしかしたら伝えていなかったかもしれない言葉。ついさっき、あの人が後押ししたからだ。
「玉砕覚悟で挑んで泣きついてもいいんじゃない?」
泣きつく覚悟。気づけば、後ろ姿に向けて清水の舞台から飛び降りる気持ちで叫んでしまっていた。振り向いたあの人は不適で素敵な笑みを浮かべる。
「やっと言ってくれた。待ってたんだよ。」
この人はこれだから狡いんだ。