【花畑】
辺り一面に色とりどりに咲く花たち
私はこれを美しいと思えない
いや、正確に云えば、花は美しいと思う
一般的には、一面に広がる花畑を見ると美しさに感動するだろう
しかし私は
ああ、花が群生しているな
としか思えないのだ
感動がわかないのだ
ただそこに在る
それだけ
こんな自分は、何か欠けてるのではないかと
花畑を見るたびに思い出す
【空が泣く】
ママーお空が泣いてる
娘の言葉に窓から外を見ると
なるほど雨がぱらついてきた
最近言葉を思うように話せるようになってきたのが嬉しいのか
娘は何でも報告してくる
そうだねー何か悲しいことがあったのかな?
娘は下を向き考え込んでしまった
ちょっと難しかったかな
突然に娘は上を向き大きな声で叫んだ
泣かないで―だいじょぶよー
痛いの痛いのとんでけー
娘の成長に、私は涙をこらえるために上を向いた
【君からのLINE】
「さよなら」と君に送った
もう会うつもりはなかった
それなのに、なぜ、君からのLINEを待っているのか
【命が燃え尽きるまで】
命は炎に例えられる
なぜか?
命を燃やすことで人は生きている
命が尽きれば生きてはいられない
命とはなんだ?
命には限りがある
その事は普段ほとんど忘れられている
気づくのはいつだって終わりが近づいたときだけ
慌てたところでもう遅い
燃えた命は戻らない
今ある炎を両の手で守っていくしかないのだ
【夜明け前】
藍の空が少しずつ紫に変わる
この時間に空を見るのが好きだ
もう少しもすれば新聞配達のバイクの音が聞こえるだろう
部屋の中は濃紺色の空気が充満している
一息吸えば自身も藍に染まってゆく
この瞬間は自分というものがなくなっていく様で気持ちが楽になる
辛いとか、苦しいとか、喜びや悲しみ、
そんな感情さえ入り込む余地がない
このまま藍に呑み込まれてしまえたらどんなにいいか
ああ、今日も朝が来る
オレンジの光が差し込んで、藍はたちまち消え失せる
自分の輪郭が露になる
それと同時に感情も戻ってくる
ああ、今日も一日が始まる