「ありがとう」
その言葉にありがとう
それとごめんなさい
そんな優しい言葉を
私の怖がりな偽物の優しさに
使わせてしまって
その優しい言葉に
依存して生きる私は
すごく狡い
でも
そうにしか生きられない
嫌われるのが怖くて
自分を切り売りするように
臆病な優しさを振り撒いて
それで苦しくなりながら
優しい言葉に慰められて
恐ろしい沼にはまってしまったみたい
真っ暗な部屋の片隅で
埃をかぶって
忘れ去られたアルバムを
たまには
窓を開けて
空気を入れ替えて
掃除機をかけて
ついでに食器も磨いたりして
それで紅茶でも淹れながら
ゆっくりゆっくり
見返す時間をとれたらいいな
世界が真っ逆さまになってくれたら
私の願いはきっと叶うのに
明日もずっと清く正しく世界は回る
誰かの我儘と小さな声を犠牲にして
もしも世界が本当に逆さまになったら
苦しみの声は消えるかな
そんなことないんだろうな
だから私はそんな世界じゃ生きていけないわ
また別の人が苦しむだろうから
また私の願いは叶わないから
誰かを犠牲にして得る
平安とか幸福とか
無意味なのだとそろそろ誰か
分かって気付いて直してくれればいいのにとか
そんな人任せにぼんやり考える
力不足な私が何かをなせるようになりますように
誰かの人生に少しの意味と幸福を残せるように
そんな小さくて壮大な夢ばかり抱えて
何も成せない私が憎い
私の人生とか思想に対して
重大な何かがあった日は
心が波立って
頭が恐ろしい程回って
目を瞑っても
意識が冴えている
そんな夜は
原因がいいことか
悪いことかは
関係なく
なぜだか少し泣きたくなる
この内側で暴れ回る
どうにもならない熱を
感情へと昇華したいのだと思う
いつだって
私は何かを成し得たい
だけど
私の力不足とか
厳しい現実とか
そういうものに
すごく打ちのめされて
手を伸ばすことすら
少し億劫になる
でも諦めたくなくて
伸ばしかけた手を
届かせてみたくて