その日
茶屋ヶ坂公園の紫陽花は満開で
うちら強運じゃんって
たくさん写真を撮る君の笑顔は
花がかすむくらい綺麗で
キュンとなった

「また来ようね。約束だよ」

小指を差し出して言う君の声を残したまま
叶うことなく何年も過ぎてしまったよ

僕らをおいてきぼりにして
今年も花は咲き誇る


「約束だよ」

傘の中には私の世界がある
丸みのある傘を選んで
枝を低く持って
目深にすると
そこは私だけの空間
周りの人たちとバイバイ
まるで透明人間になったよう
いるのに、いない
雨の日の密かな楽しみ


「傘の中の秘密」

勝負して
どちらが優れているか決めることは
そんなに意味はない

でも
勝った時の達成感と
負けた時の悔恨の涙は
どちらも
前に進むチャンスだと思えるかどうかに
意味がある


「勝ち負けなんて」

さらさらなもの

畦道の小川
赤ちゃんのほっぺ
書きやすい万年筆
流しそうめん
おろしたてのシーツ
娘の髪
過ぎる時間

これで最後なんだ
もう会えないなら
つらいから
全部忘れるね

そんな気持ちになったこと
ずっと覚えてる