八重歯の君

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8/12/2025, 1:15:17 PM

両親共働きだったから
小学校の夏休みは毎年
母の実家に預けられた

祖母は暑い中
乳母車に私と年子の姉を乗せて
朝市に野菜を買いに行く

今思えば二駅はゆうにあり
そこそこの距離だったと思うけど
姉とトロッコに乗るかのように
その道のりを楽しんでいた

野菜には興味はなかったが
帰りに宝石箱というカップアイスを
買ってもらえる事だけが嬉しかった

8月、眩しい日差しの中蝉が鳴くと
優しかった祖母の記憶がよみがえる

「真夏の記憶」

8/11/2025, 4:07:37 PM

店員から受け取ってすぐに走り出すから
ストロベリーアイスがコーンから落ちた
「あっ」
一瞬時が止まり
彼女の顔が歪んだと思ったとたん
大泣きし始めた
やると思った…

「チョコもおいしいよ」
小さな手に握りしめられたコーンに
自分のアイスを半分乗せた
「パパとおそろい!」
さっきまでの泣きっ面が嘘のよう

こぼれたアイスは
あっという間に愛犬が平らげた

ある晴れた夏の話

「こぼれたアイスクリーム」

8/10/2025, 1:25:53 PM

ダイジョウブ?
言葉だけだってわかってる
わかってるはずなのに
からだ中に染み込んでいく
ああ
どうしてこうも
手の届かないあなたは
私にやさしいのだろう

「やさしさなんて」

8/3/2025, 1:42:27 PM

あっついねー
そうだね
どこに行きたい?
どこでもいい
何食べる?
なんでもいい

ノープランで彼女を迎えに行ったものの
会話というより
これではまるで尋問だ

行くあてもなく
ドライブが続く

冷えたコーラはすっかり常温になり
僕の話題も尽きて
BGMに頼る時間

好きだよ
、、、私も
とても、好き。あなたが
無口な君のその言葉が
ぬるくなって甘さを増した炭酸のように
君への想いを強くする

「ぬるい炭酸と無口な君」

8/2/2025, 3:17:30 PM

彼には好きな人がいて
いつも恋愛相談の聞き役だから
彼にバレないよう
波打ち際に
「好き」って書いてみるけど
すぐに波が私の告白をさらっていく
ホントは気づいて欲しいのに
「大丈夫、きっと実るよ」
そう彼に伝える言葉は
私へのエールでもある


「波にさらわれた手紙」

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