両親共働きだったから
小学校の夏休みは毎年
母の実家に預けられた
祖母は暑い中
乳母車に私と年子の姉を乗せて
朝市に野菜を買いに行く
今思えば二駅はゆうにあり
そこそこの距離だったと思うけど
姉とトロッコに乗るかのように
その道のりを楽しんでいた
野菜には興味はなかったが
帰りに宝石箱というカップアイスを
買ってもらえる事だけが嬉しかった
8月、眩しい日差しの中蝉が鳴くと
優しかった祖母の記憶がよみがえる
「真夏の記憶」
店員から受け取ってすぐに走り出すから
ストロベリーアイスがコーンから落ちた
「あっ」
一瞬時が止まり
彼女の顔が歪んだと思ったとたん
大泣きし始めた
やると思った…
「チョコもおいしいよ」
小さな手に握りしめられたコーンに
自分のアイスを半分乗せた
「パパとおそろい!」
さっきまでの泣きっ面が嘘のよう
こぼれたアイスは
あっという間に愛犬が平らげた
ある晴れた夏の話
「こぼれたアイスクリーム」
ダイジョウブ?
言葉だけだってわかってる
わかってるはずなのに
からだ中に染み込んでいく
ああ
どうしてこうも
手の届かないあなたは
私にやさしいのだろう
「やさしさなんて」
あっついねー
そうだね
どこに行きたい?
どこでもいい
何食べる?
なんでもいい
ノープランで彼女を迎えに行ったものの
会話というより
これではまるで尋問だ
行くあてもなく
ドライブが続く
冷えたコーラはすっかり常温になり
僕の話題も尽きて
BGMに頼る時間
好きだよ
、、、私も
とても、好き。あなたが
無口な君のその言葉が
ぬるくなって甘さを増した炭酸のように
君への想いを強くする
「ぬるい炭酸と無口な君」
彼には好きな人がいて
いつも恋愛相談の聞き役だから
彼にバレないよう
波打ち際に
「好き」って書いてみるけど
すぐに波が私の告白をさらっていく
ホントは気づいて欲しいのに
「大丈夫、きっと実るよ」
そう彼に伝える言葉は
私へのエールでもある
「波にさらわれた手紙」