僕の温もりと声だけを頼りに
ほら…目を瞑ったまま
こっちへ来てごらん
きっと…見たことのない景色を
今 僕が君に見せてあげる
夏の終わりのぬるい空気が
窓辺の君の髪を湿らせる
君の瞳の奥に見える翳りは
時折…僕の本能を揺さぶる
さぁ…目を開けてごらん
この窓から見える景色の中で
今夜…僕は本能のままに
君を抱いて…
離さない
何年も…僕を置き去りにして
不意にここへ帰ってきた君が
ジャングルジムを覗き込んで
自分だけのフレームで夕陽を楽しんでいた
僕はただ…そんな君を見ているだけだった
幼い頃にジャングルジムに登って見た
あの日の夕陽は大人になってから見る夕陽と
こんなにも違って見えるのは…なぜだろう
あの日 まだ幼かった僕らはずっと…
ずっと一緒にいられると思っていた
互いの心が軋む音が聞こえて…
僕は泣きたくなったんだ
変えられない運命だったとしても
結ばれない心と躯だったとしても
僕は君だけを愛するべきだった
なぜ、僕はあの時…
君の手を離してしまったのだろう
そっと近付いていた秋の気配に
背中を押されるように…
君の細い手首を掴んで…
優しく君を腕の中に閉じ込めた
君は何も言わずに…
ただクスッと笑って
僕の腕の中から逃げ出したんだ
どうしてだろう…
逃げ出した君を見失ってから
僕はずっとこうして秋の気配の中に
君を探しているんだ
いつまでも君だけに恋をする
そんな秋恋…なんて悲劇的な恋
君は誰の腕の中で今…
僕を思い出しているの?
えぇ?なに?
何で笑うんだよぉ…
俺はいつだって真剣だろ?
もう一度…言ってあげる
大事にしたいのはお前だけ
ほら こっちにおいで
耳元で囁いてあげるから
大事にしたい…お前だけ
…愛してる
泣き疲れた子供のように眠る貴女が
愛おしくて…涙で濡れた髪を
いつまでも僕は撫でていた
人の温もりがこんなにも
心に染みることを
僕は知らなかったんだ
時間よ止まれ…
貴女の温もりを
独り占めしたいんだ
貴女の涙が乾くまで…
時間よ止まれ