鏡の中の自分
中学のとき、自分の容姿が好きではないから鏡を見ないようにしていると言っていた女の子がいた。
私はその子のことを可愛いと思っていたが、人それぞれ悩みはあるよなと思った。
高校生になって、私は初めて電車で彼女を見かけた。
あの頃とは変わってロングヘアで高めのポニーテール。
膝上のスカート。
あの頃と変わらない、上向きまつ毛とぱっちりした目。
彼女が今鏡の中の自分を好きでいられていますように。
自信を持って鏡を見れていたらいいな。
暗がりの中で
私はあの日からずっとずっともがいていた。
まるで先の見えない真っ暗なトンネルのようだった。
トンネルは誰かに襲われることもないし安全かもしれない。
ここから出るのは怖い。
でも私は踏み出した。まだ見ぬ景色を見るために。
気づけば光の中を突き進んでいた。
暗がりの中であなたが私の手を引いたから。
声が枯れるまで
私が声が枯れるまで叫ぶのはたいてい夢の中。
そしていつも必死に母を呼んでいる。
だけどなかなか声にならなくて胸が苦しい。
そしてハッと部屋の白い天井が見える。
台所から「とんとん」とリズムの良い音がする。
あぁ。戻ってこれた。
胸を撫で下ろすと、私はいつものようにリビングのドアを開けて言う。
「今日の夕飯何?」
せっかちな母は短く「色々」と言う。
幼い頃から変わらない応えに思わず口元が緩んだ。
ずっと幸せでいられますように。
戻らないあなたに声を枯らして泣く日がまだまだ先でありますように。
子供のように
いつまで子供のままでいられるんだろう。
思い返せば、小学生のときは「幼稚園の頃に戻りたい」
中学生のときは「小学生の頃に戻りたい」
気づいていないだけで、結局今が幸せなのかもしれない。
大人になって「子供の頃に戻りたい」と思う日が来るかもしれない。
それでも私は、子供のように好奇心や楽しむ気持ちを忘れずにこの世界を生きていきたい。
子供の目に映る景色と大人の目に映る景色は、子供の方が輝いて見えているかもしれない。
きっとそれは全てが初めてで溢れているからだ。
だから別にカッコつけなくてもいいと思う。
子供のようにこの世界を見れる大人になりたい。
放課後
頑張った日の空はいつもと違っている気がする。
ちょっと怒られちゃったりしたけど、そんな日の部活帰りの夜空は澄んだ藍色をしている。
広い夜空を見上げると宝石がきらきら輝いている。
今日を生き抜いた私へのご褒美のように感じた。
上を向いてすうっと息を吸えば私は明日も頑張れる。
だから私は頑張った日には空を見上げる。