『波にさらわれた手紙』
あの夏の花火は
私たち家族にとって特別でした
その日が来るのを
父も
母も
兄も
わたしも
とても楽しみにしていました
なのに
遠くに見える
花火に願った
どうか、どうか
今年
また同じ場所で
花火が打ち上げられる
ポストに入れても届かない手紙
どうか、どうか
『タイミング』
向こうから歩いてくる人が見える
まもなくすれ違うことになる
もちろん知らない人なので声をかけることはない
できるだけ目を合わせないように
相手のジャマにならないように
道の片側によってすれ違う準備をする
だいたいの人は
これでうまくいってるのだろう
言葉に出さなくても
でも、こんなことはありませんか?
右、あっ
左、あっ
すみません
時に
右、あっ
左、あっ
右、あっ
左、あっ
すみません
さらには
右、あっ
左、あっ
右、あっ
左、あっ
右、あっ
左、あっ
笑、笑
ほんとうにすみません…
向こうから歩いてくる人が見える
まもなくすれ違うことになる
気持ちを落ち着かせ
相手の動きをよく見る
相手のジャマにならないように
うまくすれ違えるように
心の中で駆け引きをはじめる
うまくやり過ごそうとしているだけなのに
相手のジャマになる
見ず知らずの相手と
挨拶までかわしてしまう
苦々しくも笑いながら
ただうまくすれ違うための
あたりまえでない
これがわたしの
『虹のはじまりを探して』
この島では、
夜、虹が見えるという
沈む太陽と入れ替わるように
満点の星空の間を縫うように
夜空に向かってのびていく
満月に照らされた大海原を
七色にそめる大きなアーチ
最高の祝福を受けながら
その虹のはじまりを探しに
走り出す
虹が消えるまで、
ただひたすら
左へ、左へと
『オアシス』
空の青
緑の木々
大地の音
鳥のさえずり
陽の光
湧き出す水
風の香
深呼吸
柔らかく
爽やかな
歩みを彩る
自分だけの景色
『涙の跡』
一筋伝わる
声のない涙
どうして
かなしい
くやしい
まだ
これから
もっと
ちゃんと
ごめんね
さようなら
したくない
ぜったい
ありがとう
わたしにはそう聞こえた