10/22/2023, 10:42:17 AM
クローゼットの中、埃を被った冬服を取り出す。
夏と秋の境目が曖昧なこの時期の衣替えが一番嫌いだ。
もこもこのセーターを着る雨の日。
テレビを付けて、ご飯を炊く。
ピーと鳴る呼び出しベル。
開けた蓋にホカホカご飯。
今年は大雪だそうで…。
10/21/2023, 10:17:02 AM
“私は、何万人もの客を前に歌うシンガーになりたい!”
あの決意の日から、毎日欠かさず歌い続けた。
最初は、人の目を気にして小さな公園で口ずさむように歌っていた。
散歩中のおじさんに褒められて、ギターを手に歌った。
何ヶ月か経ち、おじさんの知り合いの音楽家からギターの弾き方を教わった。
更に5年ほど経って、音楽家の紹介で地域のラジオ番組に歌を提供することになった。
その2年後、芸能事務所に入る試験を受け、失敗。
そこからは平凡な人生の始まりだ。
3日後には現実の厳しさを知って、音楽から離れた自動車販売会社に務めているのだろう。
10/20/2023, 10:22:06 AM
目が覚めて最初に聞こえるのは、温い風と静かな呼吸。
体を横に向けて、そっと髪を撫でる。
緩んだ頬に流れた涎。
少し湿った布団は、寄せて。
寒がりの目覚めを待つ。
始まりはいつも、目玉焼きの完成を前に。
10/19/2023, 10:22:04 AM
―― 午後5時19分
西行きの列車と北行き列車が交差する時。
進行方向から右の扉に立っている俺。
2つの列車がすれ違う瞬間、スマホの背を見る。
画面に映るのは、おそらく俺の顔だろう。
―期待はしない。
10/18/2023, 10:04:49 AM
連日の嵐が嘘のように晴れた。
散歩中の園児はどんぐりを拾い、買い物帰りの奥様は会話に熱中している。
燦々と輝く太陽に街は華やかな賑わいを取り戻していた。