放浪カモメ

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7/5/2023, 12:13:59 PM

あの星々のどれか一つにでも私を見上げてくれる誰かがいるのだろうか。




/「星空」

7/4/2023, 11:45:46 PM

「何があったんだい?」
眼の前の少年は答える気など微塵もなさそうだ。
豆腐を賽の目に切り、戻しておいたわかめとともに鍋に入れる。

「いくら暖かい日だとはいえ、まだ水遊びには早いんじゃないかな」
見つけたとき少年は上から下までずぶ濡れで震えていた。人通りも少ない裏通りだ。
鍋に水を入れ、コンロの火を点ける。

「まぁ、素性の知れない相手を、こうして自宅に招いている僕も僕なんだけれど、そろそろなにか話してくれてもいいんじゃない?」
思わず手を引いて連れてきたのだが、少年はタオルでぐるぐるまきにされても、大人しいものだった。本当は濡れた服も着替えてほしかったのだがそれは断固拒否された。
沸騰した鍋の火を一度止め、味噌を溶き入れ、また火を点ける。

「とりあえずこれからどうしたいんだい?」
応えたのは口ではなくそれはそれは盛大な少年のお腹の音だった。
もうそろそろいいだろう。コンロの火を止め、お椀に盛り付ける。いつもは添えない三つ葉も添えてみる。

「ははっ、良い返事だ」
顔を赤らめる少年の前にお椀とお箸を置く。いい香りだ。普段料理をしない割になかなか上手くできたと思う。
「召し上がれ?」

「いただきます」
少年は両手を揃え呟いたあときれいな所作でお椀と箸を取った。おずおずと口をつける。
ゆっくりと味わうように食べている。そこまで美味しそうに食べてもらえるとつくり手冥利に尽きるといったところだ。

「ごちそうさまでした」
ゆっくりと箸と椀を机に置き、また両手を揃えて少年は言う。
よしよし、胃袋は掴んだか。

「お粗末様でした。さて、これからのことを一緒に考えようか。大丈夫、どう転ぶかなんて誰にもわからないよ」

「『神の味噌汁』ってね」



/「神様だけが知っている」

7/3/2023, 2:25:07 PM

 昔誰かが言っていたんだ。
 右足と左足、交互に出せば、出し続ければ、どこだって好きな場所に行けるんだ、と。
 ねぇ、君はどこに行きたいんだい?



「この道の先に」

7/2/2023, 1:38:56 PM

 木漏れ日のような人だった。けして激しくはなく、かといって冷たすぎることもなく、ただ温かく、包み込むようにそこに在ってくれた。
 その温もりを失ってから気づく自分があまりにも愚かで。


「日差し」