狼星

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11/26/2023, 1:21:29 PM

テーマ:微熱 #376

――ピピピッ、ピピピッ。
脇に挟んでいた体温計を見て目を疑う。
36.9……。
朝見たときは平熱だったのに今は微熱だ。
体温計、壊れているのかな。
そう思いながら頭の中では彼のことが浮かぶ。
(カッコよかったな……。
クラスの男子にボールが当たりそうなところ
助けてもらったのだ。
その後から頭がボーっとして
今、保健室という感じだ。
ボールが頭にあたったわけでもないし、
頭が痛いわけでもない。
先ほどもいった通り朝も元気だった。
今も元気だ、でも……。
(なんだろうこの気持ち。
鼓動が早くなる。
いつもよりも体が熱い。
特に彼のことを思うと、
それは微熱程度ではないほどの。

11/25/2023, 12:15:50 PM

テーマ:太陽の下で #375

太陽の下で生きているはずなのに。
太陽が出ている時には起きられない少年がいました。
そういう病でした。
少年は雨や曇りの時しか起きられない。
途中で日の光が出てくると
日が出てくる前に眠気が来たり、
日が雲の合間からチラチラと顔をのぞかせるだけでも、
気絶してしまう、厄介な病でした。
少年は太陽が見てみたかった。
日の光を浴びたかった。
少年が主に活動できるのは太陽の沈んだ夜だ。
そのため、
少年は周りから『吸血鬼』と呼ばれていました。
確かに日の光に焼けることのない少年の肌は真っ白で
その白さは青白いと言っても良いくらいだった。
学校にいかなければ『不登校』だと言われ、
一歩外に出れば『吸血鬼』だと噂される。
少年は苦しかった。
太陽の下で生活している普通の人間なのに。
どうして人外扱いされるのか。
少年は悲しかった。
そしてその悲しさは少年の小さな胸を抉った。
少年は絵を描くのが好きだった。
太陽の下で少年が笑って手を広げている絵だ。
少年は追い詰められ、鬱病になった。
病院で調べたところ、
鬱病以外の病気も見つかってしまった。
それは太陽の下で生きられない
彼の病の進行が引き起こした最悪の結末だった。

彼は笑っていた。
最後の日やっと太陽を見られたから。
それもこんなにも近くで。
それは温かく、眩しかった。
温かな光りに包まれ、彼は目を閉じる。
「これが僕の欲しかったものだ」と。


※♡4500ありがとうございます

11/24/2023, 1:47:59 PM

テーマ:セーター #374

セーターを着ても寒いなんて……。
私は下校途中、自転車に乗りながら思った。
橋をわたっているから
建物による風の抵抗がないというのもあるが
それにしても寒すぎる。
「夏が終わって、ちょうどよくなる時期はないわけ??」
そんな事をいう私に強風が吹き付けてくる。
いつもの帰り道なのに、
いつもよりも数倍疲れる帰り道。
寒さに震えながら明日はベストを着ようと決心した。

11/23/2023, 11:29:33 AM

テーマ:落ちていく #373

「お、お前! 裏切ったのか!」
俺はソイツの胸ぐらをつかむ。
相手は笑っていた。
正気を失い、狂ったように。
「アハッ、アハッ、ハハ」
ソイツは思いっきり俺に一発入れた。
「グハッ」
避けられずその場に倒れ込んだ。
意識が朦朧としている。
最後に見たのは狂ったように、俺を見て笑っている男。
「ク、クソ……」
体がどんどん脱力し、
俺の意識は落ちていく。

11/22/2023, 12:22:27 PM

テーマ:夫婦 #372

今日って「いい夫婦の日」なんだってね。
いい夫婦の日……。
私はもう何年、夫とまともに話していないだろう。
いや、話したとしても右から左といったところだ。
いつの間にか話すことすら苦になって
自分から自分の身の回りのことを
夫に話すのをやめてしまった。

私、なんで彼と結婚したんだっけ。
結婚記念日に毎年プレゼントする絵本も
読んでくれないし。
結婚記念日、忘れていたこともあったし。

あの人のどこを見て私は結婚したんだっけ。
なんだか胸の奥がキュッと傷んだ。
私、後悔している?
いい夫婦って何?
私はこんな未来を想定して夫婦になったんじゃない。
もっと支え合って、助け合って
今日あったことを1日の終わりに話すような
そんな「いい夫婦」を想像していたのに。

現実と理想の差に涙がこぼれた。

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