テーマ:柔らかい雨 #356
柔らかい雨が降っていた。
その雨は葉に落ち、
ゆっくりと土へと潜っていった。
柔らかい雨が降っていた。
その雨は傘に落ちた。
ポタポタと音を出し、
地面へと流れ落ちた。
柔らかい雨が降っていた。
その雨は水溜まりに落ちた。
ポチャンッと跳ねる音がして
そのまま地面に溜まっていく。
柔らかい雨が降っていた。
その雨の向こうの空には
虹がかかっていた。
テーマ:一筋の光 #355
一筋の光がさしていた。
小学生の時、
それを見た友達は言っていた。
「あの光は天使様が降りてきて、
魂を天国へ連れて行ってくれている光なんだって」
作り話だと思っていた。
でも今の私には、
それが作り話なんかじゃないってわかる。
「私を迎えに来たのね」
ふっと笑う。
不思議と怖くなかった。
それはやっぱりねというのと、
やっとねというのがあったから。
そんな私の穏やかな表情を見て、
天使様はびっくりしていた。
そしてフッと微笑んでいた。
その微笑みはまさに天使そのもので
愛らしく、怖さなど微塵も感じなかった。
私は目をつぶった。
現世にサヨナラを告げるために。
テーマ:哀愁をそそる #354
哀愁をそそる景色が
電車の窓から通り過ぎていく。
ガタンガタンと揺られていく。
鼻がツンとする。
別に泣いているわけじゃない。
ただ目の前が曇ってしまっているだけだ。
※♡4300ありがとうございます
テーマ:眠りにつく前に #353
眠りにつく前に
いつもの日課でアプリを開く。
今日も誰かの励みになるような
そんな小説を書きたいから。
今日の誰かの1日の最後の楽しみになれたのなら
どんなに嬉しいだろう。
最初は1ヶ月続けばいいかなと思って続けていたことが
もうすぐ1年になるなんて。
あのときの私は予想していなかっただろうな。
あの頃よりも私は成長しているだろうか。
この小説リレーの終わりは来るのか。
私は分からない。
テーマ:永遠に #352
永遠に続く人生なんてないんだ。
昨日まで元気だった父さんと母さんが死んだ。
事故だった。
車と車の。
相手側も死には至らなかったが、
かなり重症だと言っていた。
僕は一人になった。
涙は出なかった。
僕は冷たい人間なのかもしれない。
葬式も通夜も
僕は父さんと母さんの知り合いに頭を下げられる。
可哀想という目で見られたし、
言葉にして出された事もあった。
色んな人に「突然のご不幸」と言われた。
僕は相手側の人にも何度も謝られた。
泣いていた。
代われるものなら代わりたいと言っていた。
でもそんな事する必要はない。
僕の両親は死に、
相手は生きていた。
ただそれだけが現実だ。
僕は冷たい人間なのかもしれない。
気を使って相手の人に声を掛けられていれば。
葬式や通夜に来てくれた人と
少し気を使って話せていれば。
僕は変わったかもしれないのに。
そんな声も掛けられない僕は冷たい人間だ。