私はずっと独りだった。
誰かに必要とされることもなく。
唯々人形のように生きさせられる日々。
辛かった。
泣きたかった。
でも、皆それを許してはくれなかった。
辛くあってはいけない。
泣いてはいけない。
そんな誰かに造られた私を壊してくれる人が欲しかった。
完全に壊してくれなくて良い。
だから、今の私を否定して、本当の私を肯定してくれる人が欲しかった。
そんな時、あの子が来た。
あの子のお陰で、私はそんな欲を満たすことが出来た。
嬉しかった。
楽しかった。
けれど、その幸せは本物ではないと悟った。
あの子は、私の居ない時、他のメイドに虐められていた。
絶望した。
あの子を犠牲にして幸せになっていた自分に。
渇望した。
誰も傷付けずに幸せになれる日々を。
けれど、その願いは叶わなかった。
あの子は今も私の傍に居てくれる。
けれど、あの子はどんどん傷ついていた。
私は、家族に頼った。
しかし、頼って気付いた事は、父様も母様も、兄様も、本当の私を見てくれていなかった事だ。
家族は、私という存在を隠そうとした。
王家の恥晒しな私を。
それが私という存在を守る事と知ったが、誰も彼も私ではない私を愛して、本当の私を嫌う真実には変わらない。
私なんて必要なかった。
もう嫌だ。
もう消えてしまいたい。
そうやって闇に浸っていた時、父様と母様が事故で亡くなったと告げられた。
兄様は泣いていた。
私の前で泣かなかった兄様が。
私も泣きたかった。
二人が私を庇って死んだと気付いたから。
でも泣いたら怒られる。
父様や母様に顔向けできない。
そう思うと泣けなかった。
それから数日、兄様が王になった。
王になってから、兄様は執務室に篭ってばかりだった。
私も部屋に閉じこもった。
そうすれば、兄様に会うことがないから。
そんな生活が続いて数年後、私が九才になった頃だ。
兄様が失踪した。
私や城を置いて逃げた。
パキッと、心が割れる音がした。
ああ、私、誰にも必要とされていなかったどころか、既に生きている事も知られていなかったんだなって。
兄様が失踪してすぐ、総理大臣がやってきて、城を自分の物にしようとした。
だから、私は城についての悪い噂を流してそいつを城から遠ざけた。
けれど、そいつは諦めなかった。
好き勝手に雇っていたメイドに執事、料理人等々…、
その殆どを解雇した。
当然、あの子も追い出された。
追い出される直前、あの子は私に情報をくれた。
総理大臣は、メイドの一部を残し、遊んでいるらしい。
私はずっと部屋にいた。
私の部屋は普通の人には見つけられないから、ずっと部屋に閉じこもっていた。
だから、慢心していた。
そいつは、私の部屋の掃除を担当していたメイドに彼女を愛人として置く事を条件に私の部屋に使いを手配していたのだ。
とても怖かった。
沢山の男の人が、私を見た瞬間、目の色を変えて飛び掛かってきた。
ドレスを引き千切られて、犯された。
何度も何度も。
痛い、怖い。
気持ち悪い。
私は抵抗したけれど、男の人に敵うはずもなく。
何十人もの男に回され、犯された。
唯、妊娠行為をすることは止められていたらしく、そこだけは救いだった。
それから何日かして、総理大臣に会わせられた。
そいつはあろう事か私の部屋の情報を流したメイドを殺し、私を愛人にしようとした。
私はその晩、邸から逃げた。
生まれつき持っていたと思う能力で姿を隠し、逃げた。
それからずっとずっと走り続けた。
もうここがどこかも分からない。
お腹が空いた。
足が痛い。
嫌だ。
死にたくない。
そう思いながら、私は道端で眠りについた。
次に目覚めた時は、清潔なベッドの上だった。
そこは孤児院だった。
外に出ていた職員が私を見つけ、保護してくれたのだという。
院長はとても怒っていた。
まだ九才なのに、と。
私を心配してくれていると分かって、嬉しかった。
新しい部屋に戻り、一番驚いた事は、見た目が変わっていた事だ。
父様と母様が術を施し、本当の外見を偽っていたようだった。
やはり、目の色が左右違うのは変わらなかったが、能力で何とかできる事も知った。
私は初めて、希望を知った。
それから、男性恐怖症ということが分かり、一人部屋になった。
それでも構ってくる男子もいた。
それが環だ。
環は、私を心配してくれて、愛をくれた。
私は、