あの人のはなし
　遠い遠いむかし
　
　優しくて
　なんでも願いを
　聞いてくれた
　あの人は
　約束だけはしなかった

　いつまでも
　一緒にいれたら良いね
　一年後もまたここへ
　こようよ

　そういう言葉には
　うん　とは頷いてくれなかった

　雪が降らなくなる日が
　何日も続いた

　同じ頃に
　あの人に会うことが
　なくなった

【約束】

　さっきまで
　セーターが暑いと思ったのに

　午後は　一気に
　冷え込んで
　カイロが欲しくなる

　身体を縮こませながら
　道を歩いていると

　ふと肩下へ
　薄紅色の花びらが
　落ちてきた

【ひらり】

　家に上がる足跡で
　振り向かなくても
　誰だかわかる

　利口なコだと
　にゃ　と鳴きながら
　こちらへやってくる

　余った刺身を足元へ
　そっと置いておいた


　誰かしら？

　今年も始まって
　早くも二ヶ月目が
　終わろうとしている

　嬉々として買った
　真新しい日記帳は
　殆ど埋まっていない

　まだ焦る時期じゃない
　これから頑張る

　多分

【記録】

　愛用の剣を空へ掲げて
　いざ　参ろう
　戦場へ

　今日の空は曇天だが
　夕方には晴れるらしい
　空が晴れたら
　新しい魔道書を買いに行くか

　近くでひそひそと
　見知らぬ村人が囁く

　
　なぁ　あいつまたやっているよ
　ビニ傘振り回して
　危ないだろ

　まぁ　いつものことじゃん

　そういえば　今日は
　あの漫画の新刊の発売日だよ

　マジか
　学校終わったら
　すぐ買いにいこうぜ


　【さぁ冒険だ】