つまずきそうになったら
咄嗟に手を
差し伸べてくれる 君
転びそうになった君を
今度は僕が 手を伸ばす
君とならきっと
どこまでも 行けて
何にでも なれる
【手を繋いで】
助けてくれて
ありがとう
そう 言いたかった
小説やドラマのような
ありきたりなことを思う日が
くるなんて
道の端にそっと
花束を置く
黒い羽が
すぐ側に落ちた
もしかして と思ったけれど
そんな筈はないだろう
あの鳥は 自分を庇って
目の前で ーに
ーーーーーだから
【ありがとう、ごめんね】
夕方の公園
誰もいない時は 決まって
逆上がりの練習
全然できなくて
鉄棒を握る手が 痛くなる
怖いのか 勢いが ないのか
どちらも だ
頭が下で 足が上
腕と腹で保つのが
不安で怖い
もう一度 足を蹴り上げる
近くの木から 鳥の大群が
飛び出してきて
思わずびっくりする
気がついたら
両足が空を踏んでいた
【逆さま】
本を読む者にとっての一日は
朝活という名の
朝読書
意識高く 資格の本や
自己啓発本を眺めて
シャキッと させてみる
通勤通学途中の 読書
バスや電車にて
お気に入りの
ブックカバーをかけた文庫本
なんだかんだで 一番
集中できる時間かもしれない
昼休憩
隙間時間の 読書
一文字一行一文が貴重に思える
読み終わりの区切りがつかなくて
仕事や勉強が手につかないことも
余暇時間の 読書
好きなシリーズものや長編に耽る
物語が進み
気持ちが盛り上がると
夢中になってしまう
【眠れないほど】
祖父母の家へ行く途中の
フェリーで出会った あの子
甲板で海を眺めていたので
声をかけた
名前も知らない
けれど私たちは
すぐに仲良くなれた
海を眺めたり
人形遊びをしたり
部屋と部屋の間の通路で
かけっこをしたりした
一泊二日の船路は
あっという間で
やがてフェリーは港へ着いた
私とあの子は
別々の目的地を目指して別れた
またね と 言ったら
あの子も またね と
手を振った
何十年も前のこと
写真も何も残っていない
想い出だけの 思い出
【さよならは言わないで】