しののめ

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12/3/2024, 11:13:21 PM

 祖父母の家へ行く途中の
 フェリーで出会った あの子

 甲板で海を眺めていたので
 声をかけた

 名前も知らない

 けれど私たちは
 すぐに仲良くなれた

 海を眺めたり
 人形遊びをしたり
 部屋と部屋の間の通路で
 かけっこをしたりした

 一泊二日の船路は
 あっという間で
 やがてフェリーは港へ着いた

 私とあの子は
 別々の目的地を目指して別れた
 またね と 言ったら
 あの子も またね と
 手を振った

 何十年も前のこと
 写真も何も残っていない
 想い出だけの 思い出

【さよならは言わないで】

12/1/2024, 10:26:06 PM

 どんなに遠くにいたって
 地球の反対側にいたって
 同じ空を見上げているから
 心はゼロメートルだから
 
 そう言った君を
 いつまで信じて良いのだろうか

 君の名前が刻まれた
 石の柱に向かって
 僕は問いかける

【距離】

11/27/2024, 4:22:54 AM

 気になっているあの人を
 見るだけで心臓の鼓動が
 早くなるのなんて当たり前で

 動作のひとつひとつを
 無意識に 追ってしまう

 熱を帯びる視線にどうか
 気づかれませんように

【微熱】

11/26/2024, 8:05:48 AM

 夕方かと思った空は
 まだ昼間で

 冷たくなってきた空気に
 寒いね と
 君と並んで語らふ
 
【太陽の下で】

11/24/2024, 11:12:05 PM

 衣替えでセーターを取り出した
 糸玉とほつれを見つけた
 去年の私へ
 綺麗にしてからしまってください

 そして
 暖かくなったら
 忘れてそのまま箪笥の奥へ

【セーター】

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