オレ、なんか別の世界に来たみたいなんだ。
アイツが…見当たらないんだ。
それに、元いた世界と、見た目は全部おんなじなのに、色が無い。
昔を思い出すけど、それとは違う。ここは「外」だから。
オレ、こんな世界知らない。
帰る方法、知らないか?
…別の世界、だよな?そうだよな?
そうに決まってる。アイツがいないんだから。
アイツがいない世界は、全部違う世界だ。
オレがいる世界じゃ、オレがいるべき世界じゃ、ない。
え?元の世界に戻ったって、アイツがいるとは限らないって?
……
余計なこと言うんじゃねえよ。
言ったろ?アイツがいない世界は、オレがいる世界じゃないって。
アイツがいない時点で、元の世界もオレがいるべき世界じゃない。
口挟むんなら、教えてくれよ。帰る方法。
「アイツがいる」元の世界に帰る方法を。
なあ、早く。
はやく。
【まだ知らない世界】
_____
他力本願。
「もし、オレのことを手放さなきゃいけない時がきたら、お前はできるか?」
「そんな時がくると思うのか?」
「わかんねえけど、もし、そうなったら」
「じゃあお前は?俺のこと手放せるのかよ」
「それは、」
「そんな話をするってことは、お前はその勇気があるってことだよな」
「……」
「俺を手放さなきゃいけない時がきたら、お前は手放せるんだな?」
「………嫌に決まってんだろ、無理だよ、やだ」
「…それなら、俺の答えも分かるよな」
「……」
「そんな未来永劫ありえねえこと、二度と聞くんじゃねえぞ」
「…うん」
【手放す勇気】
_____
愛が強すぎる故に、詰め寄ってしまう。
生きていくうえで、なくてはならない。
手放したら死ぬ。いなくなったら死ぬ。
ずっと側にいるべき、一緒に生きるべき存在。
そういう意味をこめて、
「俺にとってお前は酸素みたいな存在だよ」
と言ったはずだけど、
お前は腹を立ててしまった。
言った後で気づいた。
この言葉、目に入らない、見向きもされない存在とか、ありふれて、個性のない存在って意味にも取れるよなって。
ごめん、俺が悪かった。
誤解招くようなこと言って。
これからはこんな回りくどいこと言わないから。
これからはちゃんと「大好き」って言うから。
【酸素】
φ(..)
【記憶の海】
うざったい絡みをしてくる。
所構わずでかい声で俺を呼ぶ。
寄り道をそそのかしてくる。
すぐ肩を組んでくる。
お前はそういうヤツだ。
何かあると一番に俺に電話を寄越すし、
会いたいからと、深夜に家に押し掛けてきたこともあった。
そんな、はた迷惑なヤツだけど、
人生を諦めかけてた俺を救ってくれたのも、
一度たりとも側を離れずにいてくれたのも、
心の温もりを、幸せを教えてくれたのも、
俺の存在を「幸せだ」と言ってくれたのも、
全部お前だった。
お前だけだった。
お前の言動が全部、俺への好意、愛情の表れなのは知ってる。
それに対して、なんだかんだ突き放せずにいる自分の心も、俺は知ってる。
だから俺は決めた。
そんなお前を、俺の『幸せ』を、一生かけて守ると。
【ただ君だけ】