オレはもう二度とアイツを離さない自信があるけど、アイツがもう二度とオレから離れないという保証はない。
だから、オレは縋るだけ。
例え薄皮一枚、ひも一本程度しか、オレたちの繋がりが残らないとしても、それを容赦なく追い回して、「もう二度と離さない」を遂行するだけ。
いつかその繋がりも千切れてしまったら、
その時がきっと、オレの人生の終わりだろう。
【もう二度と】
上を見れば、どこまでも続く、灰色の重たい雲。
そろそろ降ってきそうだ。
「降ってくるのが雨じゃなくてお前だったら、受け止めてやるのに」
「親方!!空から」
「皆まで言うな」
【曇り】
いつ死ぬかも分からない環境で生きてきた自分。人生における幸せなど、微塵も期待していなかった。
特に、人間関係の幸せ。
だから、誰と接するときも、毎回、今生の別れをすることを覚悟し、
別れの挨拶も、「じゃあな」と、未練を残さない言い方をしていた。
それなのに。
同じ境遇で生きてきたはずのアイツに出会って、すっかり変わってしまった。
アイツと過ごして初めて、人と別れることに未練を感じた。
それに、アイツは別れる時、明日があることを確信しているような顔で「またな」と言う。
そしてその言葉通り、またアイツに会えることに、幸せを感じてしまって。
いつもどおり「じゃあな」と返したら、二度と会えなくなりそうで。
いつしか別れの挨拶は、未練がましい「またな」に変わった。
【bye bye...】
大切な景色の思い出を絵におさめる。
その全てに、君の姿を付け足して。
「全部に描かなくてもいいのに」
と君に言われたけど、
「未完成のまま終わらせるつもり?」
と返してやった。
【君と見た景色】
「大切なものが無くなった」
と言われたので、仕方なく一緒に探すことにした。
家全体をくまなく探す。
普段見ないところまで注意深く見て、ずいぶん長い時間探したのに、一向に「見つかった」と言わない。
「なあ、一体どこにあるんだよ?」
苛立ち混じりに聞いたら、
「ここ」
そう言いながら、抱き締められた。
なんだよ、
人がせっかく苦労して探しまわったのに、
「無くなってなんかねえじゃん…」
【どこ?】