疲れが溜まった身体を
勢いのままソファーに沈める。
途端に睡魔が襲ってくる。
やらなければならない事が沢山あるが
今は睡魔に任せてこのまま眠ってしまおう。
目を閉じるとだんだんと意識が遠ざかっていく。
夢と現実の境目。海の中のようにふよふよと漂う。
海の底まで行ってそのまま消えてしまいたい。
そんな事を考え眠りにつく。
ー海の底ー
この街に住み続けてどのくらい経っただろうか。
私だけがまだこの街に囚われている。
君の影が残るこの場所に。
もう会えはしない君。
そんな君に会いたくて
私は後どれくらいこの場所に囚われるのだろう。
ー君に会いたくてー
棚の奥底に閉まった一冊の手帳。
過去の私が詰まった日記。
明るい未来など見えなかったあの頃
私は一冊の手帳にひたすらに弱音を綴る。
辛かった事、苦しかった事、泣いた事、全て終わりにしたかった事。
そうして自分を保っていた。
あの日記は過去の私そのものなのだ。
強くある為に今は閉ざされた日記。
自ら閉ざしてしまった日記。
ー閉ざされた日記ー
いつか見た星空を見上げる。
あの日と同じ空のはずなのに
何も変わっていないはずなのに
どうしてなのか輝いて見えなかった。
美しいと思っていた景色は
君がいないだけでこんなにも霞んで見える。
ー美しいー
この世界は残酷だ。
誰かが死んでも時間は止まってくれないし止まらせてもくれない。
何もなかったみたいにいつも通りの日常が始まっていくのだ。
そんなこの世界が私は嫌いだ。
長い坂と階段を登り数年ぶりに来た二人の思い出の場所。
少し古くなったベンチに腰掛け深く息を吸い込む。
君がいない事以外あの頃と何も変わらない景色と匂い。
君のいない隣を見つめゆっくり瞼を閉じる。
優しすぎた君は残酷でも美しいのだと
この世界をひどく愛していた。
いつかは私も君が愛したこの世界を愛してみたいと思う。
ーこの世界はー