「風鈴の音」
風鈴の音を聞くと、子供の頃の事を思い出す。
夏休みに親の実家に里帰りをして、普段は会わない親戚の子供達と一緒に遊んで。
昔ながらの縁側でスイカを食べたり、虫採りをしたり。
たまには大人が引率してくれて川にも行ったなぁ。
夜には花火。
「振り回すな‼」って怒られた事もあったよね。
そんな、どこか懐かしい夏の風景には、必ず風鈴の音と扇風機の音がついてくる。
田舎の生活なんて不便だし、今と比べると家電も良くないし、テレビのチャンネルは少ないし。
でも、それだからこそ何物にも代えがたい思い出になっている。
不便な中で、自分達で工夫して作り出した遊び。
自然の中で学んだ事。
全てが、懐かしくて、温かい、思い出。
「心だけ、逃避行」
貴方と一緒に逃げてしまいたいけど、それは許される事ではないから。
だから、せめて心だけでも貴方と居させて。
心だけでも、貴方と一緒に逃避行させて。
きっと、貴方と私は一緒にはなれないから。
だから、せめて……
「冒険」
毎日何らかの発見がある。
昨日までは知らなかった花の名前がわかった。
長年間違えて覚えていた物の正しい名前を知った。
道を間違えて新しいお店を見つけた。
オススメで流れてきた動画を見たらハマった。
着た事のない色の服を着てみた。
ホントにちょっとした事なの。
でも、ちょっとした発見が毎日の冒険。
それが、楽しい。
「届いて……」
この声が、貴方に届けばいいのに。
どれだけ叫べば、届くの?
どれだけの想いを込めれば、届くの?
何も解らない私は、ただただ叫び続ける。
この、誰も居ない深い森の、穴の中で。
命が尽きるその日まで、叫び続ける。
「あの日の景色」
旅行に行って初めて見る景色。
一本道を間違えて、そのおかげで見つけたキレイな景色。
テレビや本で見た絶景。
年を重ねるにつれて、沢山のキレイな景色や、キレイじゃなくても心に残る景色を見てきた。
でも、どれだけ素晴らしい景色を見ても。
幼い頃に、父の肩車で見た、日頃は見られない様な高くからの景色には敵わない。
遊び疲れて眠りこけ、母に背負われて、目が冷めた時に肩越しに見た景色には敵わない。
ただ真っ直ぐに愛された記憶と共に蘇る、あの日の景色に勝る景色はない。