「ただひとりの君へ」
世界中に沢山の人がいて。
私も貴方も、その中のただ一人でしかなくて。
何か特別な事を成し遂げた訳でもない。
特別綺麗でもなく、優秀でもなくて、ただの普通の人。
でも、私は知ってる。
貴方の優しさや、善良さを。
見知らぬ他人に思いやりを持って接したり、遠い国の悲しいニュースを見て涙したり、「自分に出来る事はこれ位だから」って、決して裕福ではない中から募金したり。
ちっぽけかもしれない。
誰でも出来る事なのかもしれない。
でも、貴方が善人な事は事実で。
何処にでも居る人だけど、私にとってはかけがえのない、ただ一人だけの貴方で。
そして、貴方だけではなく。
きっと、私も、あの人も、その人も。
全ての人がきっと、誰かにとってのただ一人の人だと思うから。
だから、全ての人が皆に優しく、皆を大事に出来る世の中になればいいと思う。
綺麗事だけど、ホントにそうなれれば、皆の優しさの輪が繋がって、皆が幸せで居られるのに、って思う。
皆が、皆の、たった一人の大切な人の為に、優しくなれるといいなって、心から、思う。
「手のひらの宇宙」
子供の頃から、万華鏡が好きだった。
キラキラしてて、見る度に違う世界が見えて。
まるで、綺麗な空が、海が、世界が、宇宙が、私の手の中にある様に思えた。
大人になった今でも万華鏡は好きで、お店とかで見かけるとつい手に取る。
昔からのオーソドックスな万華鏡も勿論良いけど、昔とは違って、色んな種類のが出てる。
それぞれに綺麗で、それぞれに違う世界が広がってる。
同じ模様にはならなくて、その刹那を愛おしむ。
単純に綺麗なモノを綺麗と思える、そんな幸せを噛み締めながら、目の前の綺麗なモノに没頭する。
そんな、贅沢な時間を過ごせる今日に、感謝しながら。
「風のいたずら」
冷たい風が吹く。
コートを着ていない私は、制服の襟元を合わせる様に、手でぎゅっ、とする。
さっむ。
手も冷たいし、多分鼻もほっぺも真っ赤になってると思う。
昔から、寒くなるとすぐにほっぺたが赤くなって、リンゴ病じゃないのに疑われて、保育園や学校から帰されてた。
昭和の子供みたいで恥ずかしいんたけど。
寒さの余り、自然と足が早くなる。
早く温かい家に帰りたいのに、冷たい風が吹いて前に進みづらい。
……急に風が当たらなくなる。
前の歩道の落ち葉は風に舞ってるのに、私の後ろだけ、風が止まってる。
訝しく思って振り返ると、貴方が、風を塞ぐ様に後ろを歩いてた。
「風除け位にしかなれんけど。」
ぶっきらぼうに言う貴方。
「アリガト。でも、後ろで風除けしてくれるより、横に居て手繋いでくれる方が暖かいけど。」
友達から恋人同士になって。
気安いセリフは言えるけど、甘い空気になる事はなくて、進展がなかった私達。
風のいたずらのおかげで、今日、一歩進めたよ?
風に感謝!勿論、貴方にも。
有難う。大好きだよ。
「透明な涙」
恋を失って流す涙。
友達との別離で流す涙。
映画や本で、感動して流す涙。
テレビやニュースで、悲しくて流す涙。
そして、愛する人やペットとの永遠のお別れで流す涙。
愛し過ぎて、何故か溢れて来る涙。
涙の裏には、数え切れない程の気持ちがある。
悲しみ、喜び、感動、喪失感、愛情。
そこに打算がない限り、全ての涙に理由があり、全ての涙は、美しい。
その、美しい透明な涙に感情という色をつけて、気持を流せばいい。
悲しい、辛い、淋しい、切ないとかの、マイナスの気持ちは外に流して。
嬉しい、感動、感謝、感極まるとかの、プラスの気持ちは内に流して。
「あなたのもとへ」
何もかも投げ捨てて、あなたの胸に飛び込める様な私だったら、違う未来があったのだろうか。
しがらみ、彼女との事、知らなかった事実。
何もかも、貴方と一緒に過ごせる未来と比べると、どうでもいい様な些末な事に感じた。
だから、そんな些末な事に流されず、貴方の元へ行けば良かったのだろうか。
でも、私はそうは出来ない。
ちっぽけだけど、私のプライドが。
しがらみや彼女の気持ちを無視してまで、とは思えない。
例えば心の底でそれを願ったとしても、自分だけの想いの為に、人を踏みにじる自分になる事は、自分自身が許せなかった。
私の矜持が、「NO!!」と言っている。
私が、私で居られなくなる位なら。
私は、貴方も大切だけど、自分が自分である事に価値を持ちたい。
だから、これて、いい。
自分の中の道に反しない事を選んだから、これでいい。
これが、正しい道だと思うから。