「秋風」
秋風は、何だか寂しい。
少し冷たくて、一人でいる事を感じてしまう。
自分で選んだ孤独だから、後悔もしてないし、鬱陶しい人といるよりは一人で居る方が、よっぽどいい。
でも、寒い季節になると、温め合う存在が欲しくなる。
多分、単なる寒さからの錯覚だとは思うけど。
で、猫を飼った。
そして、ハマった。
何この可愛い生き物は?
このツンデレがまた堪らない。
女王様っぷりも、人にされたら即縁切りだけど、お猫様は許せる。というか、むしろ大歓迎。
何をされても、困る事はあるけど、腹は立たない。
で、犬も飼った。
そして又もやハマった。
何この可愛い生き物は?
このつぶらな、真っ直ぐに見つめてくる瞳が堪らない。
ちょっと鈍臭くて、溝にハマったり壁にぶつかったりも、もう全てが愛らしい。
もふもふはなんて尊いの?可愛いの?愛しいよ。
……って、こうやってみんな犬猫の下僕になっていくのね。
ウンウン、わかるよ、その気持ち。
だって、もふもふは正義だから。
「また会いましょう」
そう言って別れられれば、どれだけ良かったでしょうか。
最初はあんなにお互いが好きで、大切で。
毎日が輝いていて、逢えない時間が淋しくて。
それがいつの間にか。
同じ空間にいても言葉を交わす事もなく。
たまに会話があっても事務連絡だけで、しかもそれだけの会話でもお互いに刺々しくて。
明確にいつからなのかはわからないけど、気が付いたらもう修復できない所まで来ていた。
顔も見たくない、同じ空気を吸うのも嫌。
もう、あの頃には絶対に戻れない。
何処かで元通りになれるタイミングがあったのかもしれない。
せめて、憎み合う事だけは避けられたのかもしれない。
でも、努力はしたけど、どうにもならなかった。
そもそも、あれだけ頑張っても駄目なら、もうどうにも出来ないと思う。
そして、お互いに我慢を重ねて、ここまで来てしまった。
私達に、「また」はない。
きっと、何処かで会ってもお互いに声もかけないだろう。
一度は愛した人だから、嫌いになりたくなかった。
憎みたくなかった。
好きになった自分を、貴方を、否定したくなかった。
せめて、いい思い出にしたかった。
だけど……もう、ここまで来てしまったら。
もう二度と会わない。顔も見せないで。
二度と私の人生に、関わらないで。
サヨナラ。
「スリル」
どんな時にスリルを感じる?
お化け屋敷?絶叫マシン?スピード?
私は何故か余りスリルを感じる事がなかった。
怖いって感情がそもそも麻痺してたのかもしれない。
だから、若い頃はスリルを味わいたくて、色んな事をしてみた。
でも、何をしても何だか物足りなくて。
その内に歳を重ねて、結婚して、子供が出来たら。
まぁ、子育ては毎日スリルだらけ。
子供なんて、目を離すと何をしでかすか分からない。
斜め上の行動をするし、危険を知らないから、ホントに予測もつかない。
外で気が抜けないのは勿論の事、家の中でも気が抜けないし、静かにしてるとそれはそれで絶対に何かしでかしてるから、マズい前兆だし。
毎日が大変で。兎に角無事に育てる、ただそれだけの事がこんなに大変だって思わなかった。
でも、楽しいし、充実してる。
若い頃に求めてたスリルとは違うけど、でも。
こんなスリルの方がいい。
幸せと、背中合わせのスリルが、いい。
「飛べない翼」
私には、翼もないし、飛ぶ事は出来ない。
ホントは、この場所から飛び立ちたい。
ここは、暗くて、辛くて、寂しくて。
周りを見回しても希望は見えず、変わり映えのない毎日で、いつまでもこんな場所に居たくない。
でも、飛び立てない。翼がない。
もしかしたら、一歩踏み出せば、飛べなくても、せめて跳べるかもしれない。
羽ばたけば、ここからは飛び出せるかもしれない。
でも、その、最初の一歩が踏み出せず、ずっとここに留まっている。
わかってる、ホントはわかってる。
私にないのは翼じゃない。
踏み出す勇気。
そして、踏み出した後に待っている事に対する、覚悟。
だから、きっと翼があっても、それは見せかけの翼で、きっと飛べない。
ここに居れば。誰かが決めたここに居れば。
何かがあったら、人のせいに出来る。
「あの人が、こう言ったから」「あの人の言う通りにしただけだから」って、自分で決めていない事は、人のせいに出来る。
ホントは、自分が決められないから人に任せたのに、決められない自分のせいではなく、決めてくれた人のせいに出来るから。
それは、楽で。
でも、その分自分は成長出来ず、ここから一歩も動けず。
このままでは駄目な事は、自分が一番知っていて。
楽なのに、息苦しくて、淋しくて、つまらなくて。
私には、翼はない。
でも、今日こそは。今度こそは。
飛び立ちたい。羽ばたきたい。
飛び立とう。羽ばたこう。
遠くまで、高くまで行けなくていい。
一歩一歩、進んで行く。進んで、行こう。
「ススキ」
ススキと言えばお月見。
でも、私が生まれ育った家ではではお月見をした事がなくて、何となく絵本で見た様な、ススキとお団子を縁側に置いて、みたいなイメージしかなかった。
行事って自分が当たり前にして来た事はするけど、してこなかった事って、なかなか最初の1回をしようともしないし、しようと思ってもどうすれば良いかが分からず、なかなか出来ない。
でも、子供にはなるべく沢山の行事を体験させたくて、今年初めてお月見をした。
正しいお月見なのかはわからないけど、とりあえずまず一歩、と思って、お団子を買って。
縁側はないから、家の前から空を眺めて。
たまたま外に出ていたご近所さんともちょっとお話して。
短い時間だし、ただ外でお団子を食べただけみたいな感じだったけど、初めての体験で何だか楽しかった。
来年は、もっと色々調べてキチンとしてみようと思う。
これからも、初めての経験を沢山して、知らない事を知っていきたい。
やっぱり、知らない事って楽しい。