これで最後にしよう。
私は、看護師を目指す。
目標から目を逸らしてずっとスマホに逃げていた。
どうせやってもできない。
勉強は苦しいだけ。
勉強してる暇があったら友達と遊べる。
周りの子は皆勉強してなくて青春してる。
本当にしょうもない言い訳をしていた。
毎日怒って、泣いて、泣き崩れて
でもやっぱり、勉強がしたかった。
いい点が取れないと悔しかった。
自分が社会に貢献できる人になりたいと思った。
知識がある人はかっこよかった。
人を助ける看護師という職業に出会い、憧れた。
強く、なりたいと思った。
勉強するにはスマホがとても邪魔だった。
触りたいわけでは無いのに触ってしまう癖。
離れられずに画面を眺めていた夜の2時。
でも今、私は本気で看護師になりたいと思っている。
そのためには、邪魔なものは全て目の前から遠ざけなければいけなかった。
私はいつもお参りしている神社でスマホを辞められますように。とお祈りしてから、バンッと何回も床にぶつけた。ヒビ割れたガラスがキラキラして画面は虹色になっていた。
何も無くなった。けどこれでいい。
スマホがなければ家族や友達とも連絡が取れないし、今の流行りの音楽も、ダンスも、服も分からない。
だから、家からは出ないし、服にかけるお金もかからないし、流行りが分からないから友達と話しが合わなくなって、目の前から友達が遠ざかる。
そうすれば私の周りには何もなくなる。
ああ、やっと全部消えた。そんな気がした。
これで最後。
これで勉強、ちゃんと出来るよね
静かに響く優しい雨音を聴きながら、
今日も私 雨を降らす。
外では優しい音がするのに
どうしてこんなにも私の雨音は悲しい音で降るの。
1分でも早く この雨が病みますように。
「歌」
まだ人と精霊が共に生きていた時代。
深い山の奥に、一輪だけ咲く真紅の椿の花がありました。その椿は春になっても散ることなく、百年、千年と咲き続ける不思議な花でした。人々はそれを「千年椿」と呼び、恐れ敬っていました。
その椿には、ひとりの美しい精霊が宿っていました。彼女の名は椿姫(つばきひめ)。長い黒髪、白い肌、真紅の唇。彼女は椿の命そのものであり、山の守り神でもありました。
ある年の春、都から若い武士が山に迷い込みます。彼は戦で心を病み、命を絶とうとさまよっていたのです。椿姫はそんな彼を見つけ、そっと助けました。
「なぜ命を捨てようとするのですか?」
「守るべき者も、帰る場所も、もうないのです。」
椿姫はそんな武士に毎日歌を歌い、静かな時間を与えました。やがて武士の心は癒され、彼は再び生きる理由を見つけました。そして椿姫に恋をします。
「お前と共に生きたい。」
武士がそう言うと椿姫はふんわり微笑み、そっと頬に口付けをしました。
歌は力になる。
愛する人を癒やし、
悲しみを洗い流し、
未来へとつなぐ道になる。
椿姫は、歌うことで“生き続ける”ことを選んだ。
彼女が歌うたび、紅い椿が咲く。
どんなに雪が降ろうと、春が遠くても、
その声だけは、誰かの胸にそっと灯り続けた。
やがてその歌は、人々の間でこう呼ばれた。
——「千年の詩姫(うたひめ)」と。
光り輝け、暗闇で
この闇の全てを照らして
私を救ってみせて
貴方の記憶が全て消えてしまえばいいのに。
消えて、全てが怖くなってしまえばいい。
何も信じることが出来なくて
全てに恐怖を感じてしまえばいい。
それでいいの
そうなってしまったら、私が貴方を支えるから。
貴方が接することが出来るのは私だけ。
信頼できるのも 私ひとりだけ。
私でしか安心できなくなってほしい。
それが私の願い。
早く記憶が消えますように。