「心の灯火」

今にも消えゆく灯火が
微かに揺れる灯火へ
注がれ注がれて
新たに灯る火を祝う

「開けないLINE」

よりによって間違えた
通知をスライドして消した
ポップアップで確かめて
呼吸を整える予定が

「不完全な僕」

完全な僕はここにはなくて
生まれたときからここにはなくて
求められてる僕しかなくて
応えようとする僕しかなくて
疲れてやめたら不完全な僕にされた

不完全な僕はここにあるのに
生まれたときからここにあったのに
求められない僕しかなくて
応えようもない僕しかなくて
疲れてやめても不完全な僕しかなくて

はじめから
完全でも不完全でもなかったかのように
今度は死んでいけたらいい

「香水」

カーディガンを脱いだ
ふわり
海、青、そんな香り
どこからか
あなたがふわり
何もつけない私の香水

「言葉はいらない、ただ・・・」

指先が服に触れた
繊維が引っかかった
たぶん爪の横のささくれ
仕方ない
いつも捨てるトゲトゲを
あなたは拾って丸くする
さっきはなかった
机の上にハンドクリーム