ライトブルーの車体が羽ばたく
自由をふたり乗せたそれは
砂埃にまみれていようが鮮やかで美しかった

そのまま空にとけてくれ　落ちないでくれ
願わずにはいられなかった

暗転　クレジット　明転
ここはグランドキャニオンじゃなかった

前に座ってた女の子ふたりが
手をつないで階段をのぼっていく

やっぱり願わずにはいられなかった

就活生のときGoogleマップを開いたままの
スマホ握りしめてあっちかこっちか
ここはどこだとぐるぐる歩き回った街に
なんだかんだで10年棲んでいる

すっかり馴染んだ街の景色に
あの知らない街が重なる瞬間がある

心もとない感覚はいまだ残っているのに

あの街はどこに行ってしまったんだろう

複雑で多層的であるはずのこの感情を
たった一語におさめてしまうのは勿体なくて
ひたすら捏ねくり回すときもある

あれよ　あれです
Pink Floydの虹のやつあるじゃん
あれの逆な感じ

虹を一本の光にしちゃうのが、

またスクリーンでお会いしたかった

近所の川っぺりに生えてるニセアカシアの木

風向きによってはうちのベランダまで届く匂い

枝々からずっしりと垂れる花と同じ
しなだれかかるような甘い匂い

そろそろ暑くなるねえと思う