NoName

Open App
10/18/2025, 1:09:44 PM

腹を空かせたキツネが霧濃い山中を歩いていると
山の神と出会った

散歩中らしい山の神は
うっすらと光りを放ちながら袖を伸ばし
霧に濡れたキツネの毛皮を拭い
これまたうっすらと光を放ちながら去っていく

また濡れるのになあとキツネは思いながら
山の神が去った跡に生えてきたきのこを鼻先で押した

10/15/2025, 2:06:50 PM

みながみな恋を軸に生きてるわけじゃないよ

10/15/2025, 2:02:23 AM

梨が詰まった蛍光グリーンの手提げかごを
ひたすら商品台に並べていく

片手に2,3個ひっかけるとプラスチックの細い持ち手が
てのひらに食い込んで痛いけれど
夏のスイカ一玉に比べればと無視する

半開きの自動ドアから冷たい風が吹き込んで
通路を挟んで向かいの花苗コーナーから運ばれた
青い土のにおいがほのかに香る

空のコンテナを台車に積んで裏口へとまわる

後輩のエプロンは今日も縦結びだった

10/11/2025, 7:13:43 AM

魔法がつかえるの、飛べるの、と
くびれてもない小さな手首をまわす

花弁の重みで先がすこし垂れ下がったステッキは
ゆるやかに円を描く

遠くに行かないでねと声をかけた

まだ遠くに行かないで

10/9/2025, 12:22:10 PM

爆発した蒲の穂が舞い上がり
一瞬白んだ視界のむこうで目が合ったから

Next